退職金の歴史的沿革
Updated on 2/24/97

 退職金制度は、熟練労働者を社外へ流出させない目的で、長く居てくれたら一時金を支給する、という形で戦前から発生し普及してきたようです。このために退職金制度は勤続年数に応じて二次曲線的に増加するように設計され、基本的には「退職時の基本給」×「勤続年数別支給率」となってきました。それが昭和20年代半ばなると、労働組合の要求で労働協約等により退職金の支払が制度化され、会社にとっては退職金は恩恵的給付から従業員の勤続によって累積される債務(賃金)となったといえます。
 高度成長期前においては、長期勤続の定年退職者数が少なかったために退職金支払いに対する企業の費用負担は比較的少なく、この時期には比較的安易に退職金の増額をしてきているようです。ところが昭和40年代になりますと、大企業を中心に長期勤続の定年退職者が増加し始め、退職金の支給が徐々に重荷となり始めたのです。労働協約上、既得権の侵害となる支給率の削減は困難なため、一部企業においてとられたのが、退職金算定基礎額の抑制策です。これは、昇給の際のベースアップ分が直接に退職金へはね返らないようにするもので、特別給や調整給という第2基本給を設けて、対象本給の増額を抑える措置がとられました。
 その後、大企業においては、退職金算定別テーブル方式、ポイント制退職金等、本給と連動しない支払い方法を採用するところが増え、着実に本給と退職金の切り離しが進んでいます。しかし、中小企業においては約半数を基本給連動型が占め、逆に別立て方式とするものが1割未満の数字となっています。