4.詳細な評価基準と人事考課者訓練の限界
Updated on 4/21/98

 御社ではこのように「人事評価表の基準が曖昧で評価できないという意見が出て、詳細な評価基準をもった人事評価表を作る」→その数年後に「基準が複雑で評価しにくいという意見がでて、評価項目を簡素化した簡単な人事評価表を作る」→また数年後に「人事評価表の基準が曖昧で評価できないという意見が出て....」という「詳細」と「シンプル」の繰り返しを行ってはいませんでしょうか?
 またこの繰り返しの中では「いくら良い人事評価表を作成しても評価する者の視点が統一されなくてはバラツキが出て良い結果は出ない」という意見が必ず出てきます。この意見は非常にもっともらしく聞こえるために誰もがこの意見に賛成し、短絡的に「評価をする者の訓練をしなければならない」と考課者訓練を行うことになります。(考課者訓練とは、考課者が人事考課を行うにあたって陥りやすい間違いとそれを避けるためのノウハウを学び、同時に考課基準の考課者相互間の視点の統一を行うものです。)
 しかし、本当にそこが問題なのでしょうか?確かに人によって見方にバラツキがありますが、それを矯正する(正しい見方を教える)訓練を行うことに意義があり、かつ効果が出るものなのでしょうか?詳細な評価基準を設定し、考課者訓練も実施する。これであれば評価される部下の側から見ても、すべての上司がほぼ同じような価値観で評価をするだろうと一応の期待もできるので、不公平感が少なくなり一種の安心はあるかもしれません。
1)基準がない

2)情実に流される

3)不公平なことが起こるかもしれない

4)横並びの安心できる共通の基準が欲しい

5)評価する視点も統一して欲しい という流れです。

 経営者側も詳細な基準があれば公平な評価ができるだろうと思い、労使一致してこの基準づくりと評価の視点の統一へ走ります。この論法は一見、非常に説得力があるため、理想的な環境を作り出してくれるかもしれないとの期待を持たせます。しかし考課者の視点というのはその考課者個人が長年築いてきた人生観や仕事観に影響されるため、研修を行った程度ではなかなか統一できないのが実状です。
 もっとも一般的にこの「詳細な基準作り&考課者訓練」についての労使のニーズは高いようです。なぜなら労使双方何らかの基準がないと不安だからということのようです。しかしこの不安感は基準を作り、考課者訓練を行うことによって解消されるものではありません。

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