5.目標管理制度の限界
Updated on 4/21/98

 このように「詳細な人事評価表」と「シンプルな人事評価表」のサイクルを何度か回していくと、次はそろそろ「目標管理評価」という制度の導入が検討されることになります。つまり明確にすべき基準が「詳細な評価基準」から「目標」へ変わっていくわけです。ただしこの目標管理評価にも妥当性などの問題が多いため、これも単純に導入するわけにはいきません。
 目標管理制度による人事評価制度を行っている企業では通常、以下のような問題点が発生しています。

1)高い目標を設定し90%の達成度であった者よりも、低い目標を設定し100%の達成度であった者の方が良い評価を得るなど、目標の難易度・妥当性の評価が難しい。
2)もしこの目標の難易度を評価するとなると、非常に大きな労力が必要となる。
3)目標管理の本来の目的は高い目標を設定し、それにチャレンジする風土を醸成するところにあるが、高い目標を設定すると、実際に評価をされる時に自分の首を絞めることになるので、逆にチャレンジングな風土を阻害する可能性がある。
4)事務職など、そもそも目標という概念が馴染まない職種/職群が存在する為、目標管理は全社統一の人事評価制度としては採用し難い。もし無理に全社的な人事評価制度として導入すると「あいさつを大きな声でする」「提出物を期限通りに提出する」という様なつまらない目標が立てられ、評価ができないというような事態に陥りがちです。

 目標管理制度はそもそも経営計画を策定し、その実現のために「Plan-Do-See」という経営管理サイクルを回していく中では不可欠な制度であります。しかしそれをそのまま人事評価制度に使用するというのは多くの制約があるようです。目標管理制度を人事評価制度として採用する場合には少なくとも組織のチャレンジングな風土を奪わないように何らかの形で目標の難易度評価を行う仕組みを導入する必要があります。

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