職能給=年功給?

1.年功給の定義
 さて、今や年功給は完全に時代遅れ、ということになっていますが、この年功給とは何なのでしょうか。
 年功給というのは、「勤続による習熟が能力の向上とリンクするため、賃金をそれに正比例させている体系」と定義していいと思います。単純な「年齢給一本の体系」ということではありません。(昨今ではのような年齢給一本の体系は滅多にお目にかかれませんが。)

2.職能給=年功給
 当シリーズの「06」で紹介した職能給は、実はこの年功給のバリエーションなのです。先ほど「日本の企業の9割が職能給導入」というデータを紹介しましたが、正確には職能給のほとんどはここで言う年功給なのです。
 問題は「能力の向上を測る」のやり方であって、運用方法、特に昇格(等級が上位に上がる)のやり方が厳格であるか否かで職能給の目指すところに近づくかどうかが決まります。そして多くの企業で人の能力を測る基準を作ろうとトライされましたがこれは困難を極めました。その結果、職能給は一番確かな軸、つまり「時間(勤続)」を拠りどころとする方へ流れてしまいました。「能力の向上(を測る)」という要素が抜け落ちた「賃金=勤続+α(なにがしか)」という年功給の変形になっていることが多いようです。

3.年功給が時代に合わない理由
 さて、この年功給というのは「全てが正比例」というところがポイントなのですが、社会全体が右肩上がりの当時ならまだしも、現在は「勤続=能力向上=業績向上=賃金上昇」という図式のどこかで「≠」になることが多い環境にあります。また、労働価値の評価が「現在価値」を重視する傾向にありますので、この年功給は多くの企業にとって徐々に不向きなものになってきています。一方、賃金をもらう側にとっても、かつて言われていた「今(若いウチ)は給与は安くても年々上がってそのうちたくさんもらえるようになるからな(我慢しろ)」という土地神話のような話しはもう非常識になっていますので、この年功給は労使ともに使い勝手の悪いものとなってしまいました。

4.年功給はまだやめられない
 以上のように年功給は時代に合わないものになってきていますが、では「直ちに現在価値で賃金を払う方式に変える」とか「全員年俸制にする」などという勇ましい案は、さてどうかと思うのです。かつて職能給で能力基準の設定が頓挫したことを忘れてはなりません。つまり、現在価値を重視して賃金を決めるためにはやはり「人の能力」か「仕事の価値」かどちらかの基準を明確にしなければならないのです。最近の流れでは、「仕事の価値」を具現化する「役割給」が脚光を浴びつつありますが、これもまだまだ試行錯誤の段階です。


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