定期昇給制度の終焉
98年2月18日実施のセミナーレジュメ
Updated on 2/24/98

第一部 環境の変化への対応
1−1.これからの人事管理(人的資源管理)の方向
1)時代のキーワードが人事管理に与える影響
・高齢社会、少子化、国際化、情報化、規制緩和
2)人には生来の特性(適材適所)がある
・経営者志向型と労働者志向型
・場の提供と選択によって人材を探す
3)一律管理から個別管理へ
・人材像と経営ビジョンは一体化する
・コアと非コアの人事管理区分
4)最近広がり始めた新しいスタイル
・成果主義
・自由と自己責任
1−2.年功序列のどこが悪い
1)なぜ年功序列になったのか
・年功序列のいきさつ
・真説!年功序列制度
・大企業と中小企業の違い
2)年功序列の功罪
・積み上げの発想
・能力や仕事と給与が見合わない
3)「序列」という考え方は永遠に残る?
・いつも出てくる「等級」という制度
・意図的な人事管理手法としての等級制度
・勤続、能力、役割(責任) どれで見るか
4)能力主義がそれほど広がっているのか?
・能力主義をやったからといって会社は良くならない
・多くの企業が陥る「能力主義制度づくり」の罠

第二部 能力主義と人事評価制度
2−1.能力主義を導入する4つの選択肢
選択肢1 人基準の評価制度をより充実させる(従来の標準)
    ・より合理的で説得性のある人事考課制度や能力基準を設定する。
    ・徹底した面接制度を導入し、評価の結果をフィ−ドバックする。
    ・評価基準や能力基準は常に維持管理をする
選択肢2 仕事基準の評価制度を導入する(過渡期のしくみ)
    ・仕事の価値を計測する仕組みを作る。
    ・「役割」を中心とした目標設定と目標管理を行う。
    ・役割基準に対する成果配分を明確にする。
選択肢3 認定方式をより充実させる(中小企業の事実上の標準)
    ・「基準づくり」は結局うまく機能しないという現状。
    ・相対評価が中心になるため、「認定プロセス」を重視するしくみに。
    ・納得性は「基準」とは別のところにある。
選択肢4 「自由と自己責任」の経営スタイルを導入する(21世紀の標準?)
    ・意図的な人事制度や決まり事は最小限にする。
    ・会社や組織、仕事のあり方も全く変える。
    ・人の自由な意思と責任を尊重する。
2−2.人事評価の原点
1)評価制度のめざすところ
・結局は納得性?
・測定することに偏ると…
・僅差をつけることで何が面白いのか
2)人事評価を行う度に何かが変わらなければならない
・何のために行うかは自明
・何かを変えるための人事評価とするには
2−3.公平性のための詳細な基準づくりの限界
  人事制度、特に根幹となる人事評価制度を構築する場合によく陥る勘違いがあります。それは、「評価制度構築=詳細な基準づくり」と思い込むことです。
1.社員を活性化したい
      ↓
2.そのためには評価をしなければならない
      ↓
3.評価は公正にしなければならない
      ↓
4.そのためには明確な基準が必要だ
      ↓
5.そのためにはモノサシとして、詳細な評価要素や能力基準を設定する必要がある!…?
2−4.等級制度の設計について
1)職階等級制度
・役職(肩書き)を基準に等級を決定する方法。熾烈な選別人事が可能であれば、制度としてはシンプルであり、報酬制度にも破綻を来さない理想的な方法と言える。
2)能力等級制度(職能資格制度)
・職務遂行能力に段階をつけ、能力の高さ応じて等級を決定する方法。別名能力育成主義とも呼ばれる非常に日本的なシステム。人間中心の基本発想は理想的と言える。これは能力があると認められれば、ポジションに就かなくてもほぼ同等の処遇が受けられるもの。しかし現実は能力の客観的な計測が不可能であったため形骸化。結局、職階制でもないかといって真に能力を反映した制度でもない中途半端なものになり、最近では賃金パフォーマンスの悪化のため、多くの企業で抜本的な見直しを迫られている。
3)役割等級制度、責任等級制度
・役割や責任の大きさを基準に等級を決定する最近注目のスキーム。しくみは目新しいものではないが日本では馴染みのない発想であるため、年功序列に流れてきた組織風土を変えるカンフル剤的な働きをする。
2−5.B/S視点の評価〜マトリクスによる等級設定法
1)2つの軸で職種の傾向を表す
・メインマトリクスの軸を考える〜代表的な2つの切り口で構成(維持と革新、業績と組織対応力、ベースとニューベース、質と量、等々)
2)サブマトリクスの利用法
3)等級の切り方
4)現在位置が明確になるメリット

2−6.P/L視点の評価は加点方式で
1)加点評価の視点
・すでに順番や意思は決まっている
・なぜあなたは彼をそう認定したのか?が説得できるか
・モノは言い様
・「説得できる理由づけ」が評価の品質を向上させる
・達成すべきゴールが明確で納得性が高い場合は±評価も使える
・正規分布信仰の勘違い
2)加点評価は記述式
・明確な役割や責任を提示できないことが圧倒的に多い
・認定材料としての事実の記述
・マイナス行動のペナルティ
・品質維持は公表と事後サーベイ

第三部 報酬(給与)制度
3−1.業種の特徴によって適用する評価制度と報酬(給与)制度の違い

3−2.給与(賃金)体系設計の基本
1)累積賃金と時価賃金の組み合わせで考える

2)累積賃金
・キャリア軸
・BASE給
・上限下限方式(範囲給)
・昇給は自由に
3)時価賃金
・等級制度の採否
・判断基準=勤続、能力、役割(責任)、実績数値
・等級の運用(昇格・降格)
4)諸手当はどうする
・生活関連手当
・職務関連手当
5)賞与
基本給非連動型の賞与(時価賃金と連動)
6)退職金
・基本給非連動型の退職金
3−3.今季昇給はこうなる
1)新聞の報道の中身
2)賃上げ率と賃上げ額
3)定期昇給とベースアップ
4)今季の賃上げの傾向
5)定期昇給はおしまいの時代へ