間違いだらけの経営計画
98年5月27日実施のセミナーレジュメ
Updated on 5/26/98

株式会社 名南経営
MAS事業部課長 亀井英孝
1.上手く行かない経営計画の3つの特徴
1)金融対策のない経営計画

2)経営者の生き甲斐、社員の働き甲斐が反映されていない経営計画

3)進捗チェック体制を確立しないまま進める経営計画

2.金融対策の進め方
1)資金繰り悪化の前兆
a.企業体質的な前兆
・その1:慢性的な赤字体質(損益と、キャッシュフロー(以下CF))
・その2:過剰投資体質(設備投資だけでなく、在庫投資、保険への投資等も)
・その3:支払超過体質(CFと返済及び積立金のバランス)
b.突発的要因による悪化
・その1:取引条件の変更
・その2:債権の貸し倒れ(裏書にも考慮)
・その3:災害、事故の発生(PL法等も考慮)
2)資金繰り改善の対策
ステップ1.損益と収支の違いを正しく理解する
ステップ2.資金繰り改善の対策(『借りなくて済む』体質作り)
a.自社の現状を知る
 A.事業規模(借入金規模)に見合ったCFが、確保できているか
 B.過剰投資になっていないか
 C. 支払超過体質になっていないか
b.具体的チェック方法
 A. CFの確保
  (1)損益黒字であるが、CFは借入金総額の1/10未満である。
  (2)損益赤字で、CF黒字であるが、CFは借入金総額の1/10未満である。
  (3)損益、CFともに赤字である。
 B. 過剰投資の有無
  (1)売上債権投資の見直し
   売上債権回転日数=(売上債権残高÷年間売上高)×365日
  (2)在庫投資の見直し
   棚卸資産回転日数=(棚卸資産残高÷年間売上高)×365日
  (3)その他投資の見直し(特に生命保険積立等を中心に)
 C.支払超過体質の有無
ex.)
 定期積立金一覧表(千円)
銀行名契約日満期日満期額積立月額現在残高利 率備 考
○○銀行H8.10.5H13.10.512,0002002,4000.30%担保
○○銀行H9.5.9H14.5.930,0005003,0000.35%
△△信金H6.6.8H11.6.812,6002108,6101.50%
合 計96,0001,26043,010

借入金返済一覧表(千円)
銀行名借入日終了日借入総額返済月額現在残高 利 率備 考
○○銀行H6.5.6H16.5.660,00050039,0002.6%
○○銀行H7.8.8H22.8.854,00030045,6002.3%
△△信金H5.4.8H15.4.836,00030019,5003.0%
合 計1,800154,100
※ 形式は問いません。
※ 同時に金融機関毎の預貸率(注2)や実質金利などもあると良いでしょう。

c.具体的改善策
A. 事業規模(借入金規模)に見合ったCFの確保
(1)固定費の削減
(2)利益率(粗利率)の改善
(3)売上の拡大
B. 過剰投資の解消
(1)顧客別債権管理の徹底(取引先毎の与信設定)
(2)適正在庫の明確化
(3)昔の契約、投資を中心に洗出し
C.支払超過体質の解消
(1)積立金の積立て一時停止
(2)定期預金の取崩し
(3)借入金一月返済額の一時減額
<<その為に必要なもの>>
・利益計画書(具体的な改善対策を盛込んだもの)
・資金調達運用計画(投資等の改善計画を盛込んだもの)
・資金繰り計画表(減額要望を盛込んだもの)
<<作成上のポイント>>
・明確な根拠付けがされていること
・最悪の事態も十分考慮してあること
・すべての予想・結果に理由が示せること
・資金計画は詳しいほど良い

3.経営者の生き甲斐が反映される経営計画策定のポイント
1)好ましい6つの経営サイクルの確立

2)自分自身のタイプを明確にする
(1)希望タイプか、リスクタイプか?
(2)現場タイプか、非現場タイプか?
(3)何を最も重視する経営でありたいか?
3)企業の存続と発展を保証する、最も重要なポイント
4)社員の個性を重視した役割分担になっているか?

4.推進及び進捗チェック体制の確立
1)基本的認識
a.経営者自らが、何としてでもこの経営計画を実現していこうという強い決意を持つ事
b.計画そのものを多頻度に見直し・微修正をし、年に1回は全面的に見直し、作成し直しをする事(基本線は外さない)
c.社員全員(少なくとも幹部社員)が、個々の計画を番号で言える位、計画が頭に叩き込まれている事
2)進捗チェック体制の確立
a.誰が誰に対して監査(レビュー)するのかを明確にする。
b.どのような内容で監査するのかを明確にする。
c.どれ位の期間毎に監査するのかを明確にする。
d.どのような形式で監査するのかを明確にする。
e.監査記録を残す。