定年を迎えた社員の継続雇用を拒否することは可能か?
A 原則希望者全員を再雇用しなければなりません。しかし、就業規則に定める解雇や退職事由に該当する場合等は拒否することができます。
1.定年後の再雇用制度と経過措置
2013年4月1日に施行された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正により、事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とするものにしなければなりません。ただし、2013年4月1日までに労使協定が締結されていた場合においては、最長で2026年3月31日までを経過措置として労使協定で定めた基準に基づき再雇用対象者を限定することができるものとされており、2021年2月時点では再雇用対象者を限定できるのは63歳以上の労働者となっています。
2.就業規則における解雇事由・退職事由
上記1.でも述べたとおり、法改正により2013年4月1日から一部経過措置の部分を除き、再雇用制度の対象者を限定することができなくなりましたが、心身の故障のため業務に耐えられなかったり、勤務状況が不良で引き続き従業員としての責任を果たすことができないなど、就業規則の解雇事由や退職事由(年齢に係るものを除く)に該当するのであれば再雇用を拒否することができます。
3.労働条件
再雇用を行うに当たり、会社は労働条件を希望者に提示することができますが、どのような条件を提示すべきかについては「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では特段規定が設けられていません。しかし、厚生労働省は「高年齢雇用安定法Q&A(高年齢雇用確保措置関係)」(Q1-9)において、あくまでも法律が求めているのは再雇用制度の導入であり、定年退職者が希望する条件で雇用することを義務付けているわけではないため、会社は定年退職者に「合理的な裁量の範囲の条件」を提示していれば、仮に定年退職者との間で労働条件への合意が得られないため結果的に再雇用を拒否することになったとしても法違反にはならないという見解を示しています。
※高齢者法では以上のようにされていますが、実務においては同一労働同一賃金という別の視点での検討が求められます。
また、上記に述べたとおり「合理的な裁量の範囲の条件」であれば定年後の就労形態をいわゆるワークシェアリングととらえ、2人で1人の業務を分担するため、再雇用者の勤務日数や勤務時間を短くすることは問題ないと示されています(「高年齢雇用安定法Q&A(高年齢雇用確保措置関係)」Q1-10)。
2021年4月1日からはさらなる改正法が施行されることとなっており、70歳までの就業機会の確保が会社の努力義務となります。今後の労働力人口減少や社会情勢を踏まえると、将来的に70歳までの就業機会の確保が義務化されることも考えられますので、会社としての対応を今一度検討していくことが必要でしょう。
参考リンク
厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/
(渡たかせ)