業務中のケガの治療に誤って健康保険を使用した場合、どうすればよいか?
A 労災保険給付の請求書類を提出することで労災保険に切替ができます。
1.労災保険の適用対象であることがすぐに判明した場合
業務中のケガの治療に誤って健康保険を使用してしまうということが実務上、よく発生します。その場合の対応ですが、まずは受診した医療機関に対し、労災適用に切替える旨を連絡します。その後、労災保険給付の請求書類として、「労災5号(通勤途上のけがの場合には労災16号の2)」を作成し、労働者から医療機関に提出します。医療機関は、労働者から提出された請求書を労働基準監督署に提出し、医療機関が、労災保険給付として治療に要した費用を受け取ることとなります。
なお、健康保険適用となる治療を受けた場合には、労働者は自己負担分として医療費の3割を支払いますが、労災保険が適用される場合には自己負担はありません。従って、既に自己負担を支払っている場合には、病院から還付を受ける必要があります。
2.労災保険の適用対象であったことが遅れて判明した場合
労災保険の適用対象であることが遅れて判明した場合には、既に医療機関と健康保険の運営主体である保険者との間で清算が完了していることが考えられます。この場合にはまず、労働者から健康保険の保険者に連絡し、健康保険負担分の医療費を返納します。労災保険給付の請求については「労災7号(通勤災害の場合は労災16号の5(1))」様式を作成し、医療機関を介さず、労働者が所属する会社の管轄労働基準監督署に提出することで、労働者に直接保険給付がされます。
なお、このケースでは添付書類として(1)病院の3割分の領収書、(2)健康保険に返還した7割分の領収書、(3)健康保険から発行された診療報酬明細書(レセプト)の提出が必要となります。
(伊藤杏奈)