派遣労働者の労災保険・雇用保険は派遣元・派遣先のどちらで適用されるか?
A 労働者派遣事業における派遣労働者に対する労働保険の適用については、労災保険・雇用保険両方とも派遣元事業主が適用事業となります。
1.労働者派遣について
労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律2条1項)と規定されています。つまり、派遣元事業主と派遣労働者の間には「労働契約関係」が存在しますが、派遣労働者と派遣先事業主の間には、「労働契約関係」は存在せず、「指揮命令関係」のみが存在することになります。
2.労働基準法における派遣労働者の適用
労働基準法は原則、「労働契約関係」にある使用者と労働者に適用されるため、派遣労働者に関しても、労働者と「労働契約関係」にある派遣元事業主が基本的に責任を負うことになります(一部例外として、派遣先事業主が責任を負う部分もあります)。また、労働基準法における災害補償責任についても、派遣元事業主が労働者の派遣に関して、事業場を任意に選択でき、かつ自己の業務命令によって派遣先の事業場において就労させていることを考慮して、派遣元事業主が災害補償責任を負うとされています(発労徴41号、基発383号第二(一)イ)。
3.労働保険(労災保険・雇用保険)における派遣労働者の取扱い
労災保険に関しては、労災保険が基本的に労働基準法の災害補償に対する保険、いわば災害補償の肩代わりを行う位置づけにあること、また労働者災害補償保険法第3条1項の「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」とあることから、派遣労働者については、「労働契約関係」のある派遣元事業主が労災保険の適用となります。
また、雇用保険に関しても、労災保険同様であり、31日以上継続雇用かつ1週間の所定労働時間20時間以上という要件を満たす派遣労働者であれば、派遣元事業主で雇用保険が適用となります。したがって、年度更新における保険料の申告・納付義務は派遣元事業主が負うことになります。ただし、労災保険の保険料率の適用に関しては、派遣先での作業の実態、種類、内容等に基づき、事業の種類の決定、労災保険料率の適用を行います。
(野村悠太)