中国人事管理の先を読む!第3回「成果やミッションで保有能力を評価する」

 企業が従業員の評価を行う際に用いられる代表的な評価制度として“能力評価”と“目標管理制度”が挙げられます。能力評価は従業員が保有している能力や勤務態度に対する評価、つまり定性評価であり、目標管理制度は期間的な目標に対し、その達成度を評価する定量評価です。KPI(重要業績評価指標)やコンピテンシーなども定性評価の分類に含まれます。しかし、企業で使われている能力評価には以下のような欠点が存在します。

1.
 能力評価の基準があいまいである

2. 保有能力を評価するため、必ずしも成果とは直接つながりのある評価ではない

3. 一度に多くの能力を評価しすぎるため、重要課題が絞り切れていない

 能力評価の最大の欠点は、評価基準があいまいであることです。日本で使われる評価基準書自体があいまいに作られており、それを中国に持ってきて運用してしまうため、中国人従業員、管理者双方にとって非常に分りづらい基準になっており、
Aを付けようかBを付けようか評価者自身が迷ってしまいます。

 次に、能力は「持っているだけ」で評価してはいけないこと、仕事は保有する能力を使って「何を成し得たか」が重要であるということです。例えば、リーダーシップ能力が求められる幹部はその能力を発揮し、具体的な何かの成果を得て初めて仕事としては評価されるべきものです。しかし、企業で使われている能力評価の基準の多くは、リーダーシップ能力があるかないかを瞬間的な時間軸とあいまいな得点範囲で評価してしまうもので、成果とは関係のない着眼により、時には本当に能力を持っているかどうかさえ分かりにくい評価となってしまっています。

 従業員にはそれぞれ、ミッション(任務)やそれを遂行するために要求される能力レベルがあります。従業員に必要な能力が備わっていることが重要であるため、管理者は従業員にどのようなミッションを持たせるのかを把握し、具体的なミッションにどのような能力が必要なのかを絞り込む必要があります。能力評価を実施する過程においてはまた、業務遂行からみてプライオリティ(優先順位)の低い能力も評価してしまうという矛盾が存在する点にも留意してください。

 能力評価を機能的に活かすのであれば社員個々のミッションを明らかにし、それを遂行するためにはどのような能力が求められるのかを明確にすべきで、その能力を使って、どのように目標に向けて仕事を遂行するのか、能力の選択と目標管理の遂行を融合させた評価のフォーマットを作成し、きちんと目標設定をさせるべきだと思います。(清原学)

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