どうなる?2013年中国現地法人の労務管理~今年を予測する5つのポイント~第3回

 中国労働契約法の改正 ~適用の厳格化と派遣禁止~

 2012年春に行われた全国人民代表大会(以下、全人代という)において、2008年1月から施行されている「中国労働契約法」の改正方針が打ち出されました。当時、同法のどの箇所が改正されるか具体的な明言は避けられましたが、その後の動向や部分的に随時公表される情報から、「労務派遣」に関する適用の厳格性が求められるということが次第に判明してきました。全人代で方針表明が成されたわけですから、次年度の全人代を跨いで具体的な改正が発表されることはないと予測されたため、2012年内には何らかの方針が公布されるのだろうと注視していたところ、2012年12月28日、第11期全人代常務委員会第30回会議において労働契約法改正の公布が正式決定され、2013年7月1日から施行されるとの内容の発表がありました。

 今回改正となる部分は、予想通り同法第五章第二節「労務派遣」の部分です。同法第63条では「同一労働同一賃金」が、また第66条では企業が派遣を受け入れる場合の条件が「臨時性」「補助性」「代替性」である業務を前提とする旨、謳われています。ただ従業員を派遣で受け入れられる場合の条件定義が非常に曖昧であることもあり、運用の厳格さに欠けることから、2012年12月28日の労働契約法改正に関する発表では、これら「臨時性」「補助性」「代替性」の「三性」が定義され、2013年7月1日から施行されることになりました。

 まず業務の「臨時性」については、「存続期間が6ヶ月を超えない職位」を指すと明示されました。したがって、これを超える職位については原則派遣が禁止になります。次に「補助性」とは、「主要業務を補助する業務」、つまり指示命令系統として主要業務を遂行する従業員(直接企業に雇用されている従業員)がおり、その下で補助的業務を行う場合にのみ派遣が認められるというものです。最後の「代替性」とは、「従業員が、病欠、産休その他の事由により業務に従事できない場合に、暫定的に当該従業員の業務を行うこと」と解釈されます。

 ところが実態として、多くの日系企業(代表処を除く現地法人)が従業員を派遣で受け入れています。その殆どは、直接企業に雇用されている従業員と寸分変わらない業務や職務を担当し、派遣期間も2年間という契約を派遣企業と結んでいるのが一般的です。つまり、2013年7月1日から施行される改正労働契約法の「労務派遣」の条項に多くの企業が抵触してしまうことから、施行前までに従業員を現在の派遣契約から直接雇用に移行させなければなりません。これは、日系企業にとっても少なからず影響を及ぼすものです。

 まず、直接雇用に置き換えることで、従業員に関する無固定の労働契約(終身雇用)も今後は企業に直接適用されることになります。従来までの派遣雇用であれば2年間の契約を更新し続けることで終身雇用の影響を担保出来たのですが、それが7月からは出来なくなるということです。

 更に社会保険の納付に関する影響として、従業員のすべてを派遣で雇っている企業は、そもそも社会保険の納付口座を持っていません。これが直接雇用になった場合、まずは社会保険口座を設けなければならなくなります。また、就業規則や労働契約書の作成や改定については、派遣雇用の場合には基本的に必要がないものであったのが、その具備が求められることになります。このように、人事管理の追加対応が必要となる事項が多くあるのです。(清原学)

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