上海の日本人が減っている?
2005年11月上海は、そこに常住する邦人の人数がそれまでトップだったタイのバンコクを抜いて、
世界で最も日本人の多い都市に躍り出ました。
最多の時期では約5万8千人もの邦人が上海にいたのですが、それが今年に入り、1年前に比べ、1万人も減少しているようです。
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=88611
(ニュースソース:レコードチャイナ)
1年間で1万人も日本人がいなくなるというのも相当な人数ですが、
この5万8千人や1万人という人数は、在上海日本国総領事館へ在留届を提出している人数のみ集計しています。
一般的に海外へ赴任、あるいは赴任者に帯同するご家族の方たちは、日本での住民票を転出し、
赴任地を管轄している日本の在外公館に居所を届けなければなりません。
普通の駐在員の方たちはこの手続きをきちんと行っているのですが、日本人留学生や自分で商売を営む人たちは、
必ずしもこの手続を行っているとは限りません。
従って1万人減少しているという表向きの人数のみならず、実際はそれ以上の日本人が減っていると考えられるのです。
その原因として、①PM2.5の飛散による健康被害への不安感 ②鳥インフルエンザによる同様の不安感 ③反日感情への不安感
と、3つの不安リスクが挙げらえれています。
これらのリスクはもちろん考えられることですが、それに加えて「滞在ビザの取得の困難」が隠されています。
昨年、中国入国管理法が改正され、中国に滞在する外国人、そのご家族が滞在要件とするビザ取得のハードルが上がり、
年齢制限、具体的には60歳を超えた外国人のビザ発給は非常に困難となっていたり、
帯同家族のうち、お子様が現地の日本人学校に入学するためには、在留許可の提出が必要となったり、
外国人に対する在留ビザの発給は年々、その要件が厳格化されています。
上海の日本人学校は小学校2校、中・高各1校ずつあり、生徒数は総計で3200名も在校している、
世界No1の在外日本人学校です。
これら健康リスク、外交リスク、そして滞在の難しさが加わって、その数も3000人を切っていると言われています。
現地化に伴い、中国人幹部に経営を任せ、日本人は引き上げるといった、ポジティブな要因で日本人の数が減少していると言えば聞こえはよいのですが、
実際はこのように、カントリーリスクの表れとして、その影響が顕在化しているというのが実態なのです。
2014年6月3日 清原学