配偶者の海外赴任に同行するために離職した際に行う失業給付に関する手続/雇用保険

 2014年7月10日のブログ記事では、公務員には配偶者の海外赴任に同行する際に休業できる「配偶者同行休業制度」の導入が始まってきていることをお伝えしましたが、民間企業ではそのような制度を設けている会社がほとんどないのが実情です。そのため、一般的には、配偶者の海外赴任に同行をすることを選択すれば、やはり会社を辞めざるを得なくなります。

 会社を辞め失業した際には、ハローワークに通い求職活動を行うことにより、雇用保険から失業給付(基本手当)を受けられる制度があります。ただ、海外に居住してしまうと当然ながらハローワークに通って日本で求職活動を行うことができませんので、その場合には一つ手続をしておく必要があります。今回はその手続について紹介をしたいと思います。

1.失業給付の給付内容について
 雇用保険の失業給付(基本手当)は、離職後7日間の待機期間を経た後、離職理由や勤続年数によって決定される給付日数の範囲内で給付が受けられます。例えば勤続年数が短く自己都合退職した場合であれば、3か月の給付制限があり、3か月間待った後に90日の給付が受けられることとなっています。

2.特定理由離職者となる場合とは
 配偶者の海外赴任により別居を回避するために離職した場合には、自己都合退職ではあるものの雇用保険上は正当な理由があるとされ、特定理由離職者という区分に該当します。特定理由離職者については、通常の自己都合退職者であれば設けられる給付制限がありませんので、3か月間待つことなく受給をすることができます。

3.受給期間の延長をしておく必要があります
 この基本手当の支給を受けることが可能な期間(受給期間)は、原則として離職日の翌日から起算して1年間となっています。海外赴任は1年以上の期間を決めて行うことが多いですから、日本に帰ってくる前に受給期間が終わってしまっているという問題が生じてしまいます。

 そこで、雇用保険の制度では、受給期間内に、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30 日以上職業に就くことができない日がある場合には、受給期間を延長できるようになっており、「配偶者の海外勤務に本人が同行する場合(内縁を含む。)」もその理由の一つに当たるとされています。この受給期間の延長を行うことで、受給期間に海外居住の期間を最大3年間加えることができます。

 なお、「海外旅行」は延長が認められない事由の例として挙げられていますので、海外で同居するのではなく、単なる旅行で海外赴任中の配偶者のもとを訪れるというような場合には延長の対象となりませんので留意が必要です。

4.受給期間延長の手続方法について

 この受給期間の延長を行うには、「受給期間延長申請書」に下記の書類を添付して管轄のハローワークへ提出する必要があります。提出時期としては、受給延長は事由が30日間引き続くことが要件とされているため、原則として、離職後、海外移住をしてから30 日以上に至った時点から手続が可能となります。30日以上となった日の翌日から起算して1 か月以内に手続が必要です。
 
 この申請は、必ずしも本人自身がハローワークに出頭して行う必要はなく、代理人(委任状の添付要)又は郵送等により行うこともできるようになっています。実際には、国内にいる家族などに代理で手続をしてもらうか、海外から国際郵便で送付することとなります。

<受給期間の延長手続で提出する書類>
・受給期間延長申請書
・雇用保険被保険者離職票-1
・雇用保険被保険者離職票-2
・配偶者の海外赴任の実態がわかるもの(海外赴任の辞令のコピーなど)
・配偶者との関係がわかるもの(住民票の写し(世帯全員のもので続柄がわかるもの))
・出国日がわかるもの(航空券のコピー、パスポート(出国・入国がわかる箇所)のコピーなど)
 ※提出書類は、管轄ハローワークによって異なる場合があります。詳しくは、管轄のハローワークに確認ください。

 受給期間の延長が決定された場合には、申請の際に指定した送付先へ「受給期間延長通知書」が交付されます。この書類は、日本に帰国後、失業手当を受給しようとする際にハローワークへの提出が必要となりますので、なくさないように保管しておきましょう。(佐藤和之)

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