就業規則の変更について労働者が意見書に反対意見を示した場合はどうなるのでしょうか?
A 就業規則届出にあたっての意見書において反対意見が出た場合でも、労働基準監督署で届出は受理されるが、民事上の効力は別途検討しなければならない。
1.就業規則の作成・変更における意見聴取義務
使用者は就業規則を作成・変更する場合は過半数組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴取し、その意見を記した書面と合わせて労働基準監督署に就業規則を届け出なければなりません(労働基準法89条・90条)。
この意見聴取というのはその内容についての同意を得ることまでを求めるものではありません。あくまでも過半数組合や過半数代表者の意見を聴くことが必要ということであり、表明された意見の内容に拘束されることはありません。また、変更についても作成時と同様、意見書を添付の上、労働基準監督署に届け出なければなりませんが、これについても表明された意見の内容に拘束されることはありません。
※現実的には、労働基準監督署において、改めて話し合うような指導が行われることはあります。
2.就業規則の変更における不利益変更
上記1で述べたとおり、就業規則の届出においては、仮に意見書において反対意見があったとしても受理されますが、民事上の効力については問題となることがあります。特にその内容が従業員にとって不利益に改定されたものである場合には、いわゆる就業規則の不利益変更の問題が存在するため、注意が必要です。(労働契約法8条から10条)
[参照条文]
労働基準法89条(作成及び届出の義務)
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
労働基準法90条(作成の手続)
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
労働契約法8条(労働契約の内容の変更)
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
労働契約法9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
労働契約法10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
(渡たかせ)