退職の意思表示は口頭でも問題ないのでしょうか?
A 口頭でも意思表示は成立するが、後々のトラブルを防止するためにも退職願を提出させるべきでしょう。
1.退職の意思表示
労働者から使用者へ退職の意思表示をする方法について、法律上の制約はありません。よって、口頭でも退職の効力は発生します。しかし、口頭の場合は、後に「言った」「言わない」のトラブルが発生しやすいことから、労働者に書面で退職願の提出を求めることがよいでしょう。退職願の提出を求めた上で、使用者が承諾するという形式を採ることをお勧めします。
2.退職願への記載事項
退職願の様式は定められていませんが、少なくとも(1)退職の意思表示、(2)本人の署名、(3)提出日、(4)退職日の4点を記載してもらう必要があります。特に、退職日がいつであるかが曖昧となってしまうことも多いため、退職願の書面上ではっきりと記載してもらうようにしましょう。
3.就業規則への自己都合退職時の申出期限の記載
期間の定めのない労働契約の場合、民法627条第1項において、労働者は退職の意思表示をしてから2週間後にはその労働契約が終了する、つまり退職することが可能とされています。よって、例え使用者が退職の申し出を拒否したとしても退職は有効に成立することとなります。とはいえ、使用者からすれば退職の意思表示から2週間後に退職では、引継ぎ期間が十分に取れず、困ってしまうというのが実情です。よって、退職のルールについては、就業規則に「自己都合で退職を希望する場合は、退職予定日の1ヶ月前までに退職願を届け出た上で会社の承認を得なければならない」といった趣旨の規定を設け、使用者にとって十分な期間を定めておくとよいでしょう。
この効果はあくまでもお願いレベルではあるかも知れませんが、2週間前の申し出という規定の場合、本当に2週間前に退職願を提出するというケースが少なくありません。よって実務上は少し余裕を持って退職願を提出してもらうように就業規則で定めをすることがポイントとなります。
[参考法令]
民法 第627条第1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
(渡たかせ)