1年単位の変形労働時間制を導入する場合、所定労働時間はどのように設定することができますか?
A.対象期間における所定労働時間が週平均40時間以内に収まるように、カレンダーの作成をして設定します。
1.1年単位の変形労働時間制による所定労働時間の決め方
1年単位の変形労働時間制は、対象期間を平均した際、1週間当たりの労働時間が40時間以内に収まるように所定労働時間を設定します。そのため、対象期間における総所定労働時間の上限はその期間の長さによって自動的に決まります。例えば、対象期間を1年間とする場合、1年間の総労働時間数の上限は2085時間です。この計算は、1年365日、1週7日を前提とし、すると年間は365日÷7日=52.14週間となります。週平均の労働時間を40時間以内としなければならないため、1年間の総労働時間数は、1週間40時間×52.14週=2,085.6時間であることから、1時間未満の端数を切り捨てると最大で2,085時間までとなります。よって、会社は1年単位の変形労働時間制を活用する場合、1年間の総所定労働時間が2,085時間の範囲内に収まるよう、労働時間を設定する必要があります。
2.所定労働日数等の制限
次に、労働日の日数としては、例えば、1日の所定労働時間を8時間と決めている場合、1年間における労働日数は、2,085時間÷8時間=260.6日/年となります。1日未満の端数を切り捨てると総労所定働日数は最大260日となり、年間休日が105日以上必要であることになります。
これに対し、1日の所定労働時間を7時間とした場合、1年間における労働日数は、2,085時間÷7時間=297.8日/年となることから、総労働日数は最大297日、年間休日は68日以上となりそうですが、1年単位の変形労働時間制には、1年間の労働日数の上限が280日と定められています。よって、この場合は上限に抵触し、総労働日数は最大280日、年間休日は85日以上必要であることになります。1年単位の変形労働時間制においては、年の労働日数の上限以外にも以下のようなルールがありますので、すべてのルールを守って労働時間の設定をする必要があります。
- 労働日数の上限(1年あたり):280日
- 労働時間の上限(1日あたり):10時間
- 労働時間の上限(1週間当たり):52時間
- 連続して労働させることが出来る日数の上限:連続して6日
- 連続して労働させることが出来る日数の上限(特定期間):1週間に1日の休日を設定し連続12日
※特定期間とは、対象期間中の特に業務が繁忙な期間のことをいいます。
3.勤務カレンダーの作成
勤務カレンダーの作成方法には、年間カレンダーを作成する方法と、最初の期間のみ具体的なカレンダーを作成し、その後の期間については労働時間の総枠を定めるまでに止めておく2通りの方法があります。まず、年間カレンダーを作成する方法の場合は、上記1)で検討した内容をもとに、労働日およびその労働日ごとの労働時間を、年間カレンダーにおいて定めていきます。
もう一方の方法としては、はじめの期間のみ具体的なカレンダーを定め、それ以降の期間については、変形労働時間制を開始する段階では、各期間の労働時間や労働日の総枠のみを決めておき、具体的なシフトについては、各期間の初日の30日前までに、その都度決定していくという方法もあります。
なお、1年単位の変形労働時間制を導入する場合の手続きとして、これらの内容をまとめた労使協定を作成し、過半数労働組合または過半数労働者代表と締結の上、所轄の労働基準監督署へ届出する必要があります。決められたルールの範囲内で、どのような方法で運営していくのか、実状に合わせて検討してみてください。
(瀬古紘那)