従業員に在宅勤務をさせる際、事業場外みなし労働時間制を適用することはできますか?
A 労働時間を算定することが困難である際に、場所や状態等の一定の要件を満たす場合に限り、適用は可能です。
1.在宅勤務における事業場外みなし労働時間制の適用
新型コロナウイルス感染症の対策で、在宅勤務を導入する企業が急増しましたが、そこで問題になるのが在宅勤務時の労働時間管理です。在宅勤務をする場合であっても、原則は、パソコンの使用時間やログ記録等を用いるなど工夫して、従業員の労働時間を適正に把握することが必要です。しかしながら、在宅勤務においては、業務の様々な工夫をしても、合理的な労働時間の把握・管理が困難であるという場合もあり得ます。そのような場合には、以下の3つの要件を満たすことで、事業場外みなし労働時間制を適用することが認められています。(平16.3.5 基発0305001)
(1)当該業務が起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
(2)当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
(3)当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
まずは場所的な要件として、(1)にあるように自宅である必要があります。コワーキングスペースやカフェ、ホテル、新幹線など、自宅以外の場所でのテレワークは、在宅勤務における事業場外みなし労働時間制の適用は認められません。次に(2)の要件においては「使用者の指示により常時通信可能な状態」という点が問題になります。これは、従業員が自分の意思で通信を切断することができず、なおかつ、使用者が、(3)にある随時具体的指示を行うことや、その指示に従業員が即応しなければならない状態を指しています。つまり、使用者がパソコン等で従業員の業務や労働時間を常時管理・指示でき、従業員が使用者からの具体的な指示に随時備えて待機しつつ実作業を行っているような場合は、在宅勤務における事業場外みなし労働時間制が認められません。逆に、携帯電話を貸与されているという事実だけで、事業場外みなし労働時間制が適用できないということではありません。
以上の要件を満たす場合には、在宅勤務における事業場外みなし労働時間制の適用を検討できるでしょう。しかし、やはり原則は労働時間の把握ですので、できる限り労働時間を把握し、管理する方向を模索すべきでしょう。時間を適正に把握・管理し、従業員が安心して在宅勤務ができる環境を作る努力をすることが望まれます。
(野村悠太)