当社も中途採用比率を公表しなければならないのですか?①
もう半月で新卒入社の従業員が入ってくるのだなぁと思いながら、服部印刷に向かう大熊であった。
服部社長
大熊さん、今日は私から聞きたいことがあるのですがいいでしょうか。というのも、何やら今年の4月から中途採用も必ずしなければならなくなるのですか?
大熊社労士
え!?中途採用の義務化ですか!?初めて耳にしました。
服部社長
うちは中小企業なので中途採用も多く行っていますが、新卒採用を中心にしている会社の社長が「これからは中途採用もしなくちゃなんない」と言っているのを先日聞いて。
大熊社労士
あぁ、なるほど、おそらく中途採用比率の公表のことを指していると思います。
宮田部長
中途採用比率・・・ですか?
大熊社労士
はい。どのような人を従業員として採用するかは、基本的に会社にゆだねられています。事業に必要な人を採用することになりますよね。新卒の一括採用を中心とする会社のほかに、不足した人員の補充や業務の急拡大に対応するために中途を積極的に採用する会社もあります。
宮田部長
当社も即戦力を求めて、「経験者優遇!」とする求人票を出すことがあります。
大熊社労士
そうですよね。先ほども説明したのですが、採用の自由は会社にあるのですが、人生100年時代と言われて、職業生活が今後、長期化してくるでしょう。そうなると、自分のキャリアに目を向けたときに様々な思いが浮かんでくる人もいるでしょう。
服部社長
そうか、このまま働き続けたいと思う人もいれば、新しい仕事にチャレンジしたいと思う人もいる、ということですね。
大熊社労士
はい。労働者の主体的なキャリア形成による職業生活の更なる充実や再チャレンジが可能となるように、ということで、中途採用に関する環境整備をさらに推進するため、中途採用に関する情報の公表が求められることにになったのです。
福島さん
中途採用比率が高いということは、中途採用に積極的であることの一つの証明ということですね。
大熊社労士
そうですね。企業が長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供している状況を明らかにして、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進することになるのではないかという前提があります。
宮田部長
それで、当社もあと半月後には中途採用比率を公表しなければならないということですね。どうしよう、データを早めに分析しなければ。
大熊社労士
落ち着いてください、大丈夫ですから(笑)。まず、中途採用比率の公表が義務化となる企業は、常時雇用する労働者数が301人以上の企業です。ですので、御社は義務化とはなっていません。
宮田部長
そうでしたか、びっくりしました。
大熊社労士
そして公表は、直近の3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率が対象ですが、事業年度に合わせることになっており、おおむね年に1回、公表した日を明らかにして、インターネットの利用やその他の方法で行うことになっています。
福島さん
「いつまでに」という期日は決まっていないのですか?
大熊社労士
はい、初回の公表については、2021年4月1日後の最初の事業年度内に、2度目以降は、前回の公表からおおむね1年以内に、可能な限り速やかに公表を行うことになっています。
服部社長
なるほど。うちも公表の義務化にはなっていないものの、あまり意識していなかった部分なので、一度、比率を出してみてもいいかもしれないな。宮田部長、手の空いたときによろしく頼むよ。
宮田部長
そうですね。了解しました。大熊先生、もう少し詳しく教えていただいてもよいですか。
大熊社労士
承知しました。計算方法等は改めて確認することにしましょう。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。中途採用比率の公表は労働施策総合推進法を改正して盛り込まれたものです。2020年3月31日に成立した法律で改定され、厚生労働省からはQ&Aも出てきましたので、義務化の対象となる企業を中心に内容を確認しておきましょう。
参考リンク
厚生労働省「正規雇用労働者の中途採用比率の公表」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/tp120903-1_00001.html
(宮武貴美)