44.0%の企業でパワーハラスメントの相談件数が増加
近年、ハラスメントの問題が多くの企業で深刻化していますが、同時にその対策も進められています。その結果、ハラスメントに関する相談件数はどのように変化しているのでしょうか。今回は、一般社団法人日本経済団体連合会の「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」から、各ハラスメントの相談件数の増減状況について見ていきましょう。なお、本調査は、経団連会員企業を対象に実施され、回答企業数は400社となっています。
主要ハラスメントの5年前と比較した相談件数は以下の通りです。
(1)パワーハラスメント
増えた 44.0%
変わらない 30.8%
減った 16.3%
これまで相談なし 5.8%
不明 3.3%
(2)セクシュアルハラスメント
増えた 11.5%
変わらない 45.3%
減った 28.8%
これまで相談なし 10.5%
不明 4.0%
(3)妊娠・出産に関するハラスメント
増えた 3.0%
変わらない 28.0%
減った 6.8%
これまで相談なし 57.3%
不明 5.0%
(4)育児休業・介護休業等に関するハラスメント
増えた 4.0%
変わらない 23.8%
減った 5.5%
これまで相談なし 61.3%
不明 5.5%
ちなみに、職場におけるハラスメントの課題への対応に関する取組み数が多い企業(18社)の5年前と比較した相談件数は、全体と比較して、パワーハラスメントでは「増えた」との回答が17.1%ポイント、セクシュアルハラスメントでは5.2%ポイント高くなっています。
そもそも今回、全体で相談件数が増えた理由は、法施行に伴う社会の関心の高まり、相談窓口の周知の強化、経営トップメッセージや研修実施による意識の向上、相談しやすい雰囲気の醸成、継続した啓蒙活動、相談に関する規定の策定・改訂等であると考えられ、そうした取り組みが積極的に行われた企業が全体よりも相談件数が増えるという結果になったと思われます。よって積極的に取り組みが行われた会社のハラスメントが多いということではなく、それだけ安心して会社に相談できる環境が構築されていると考えるべきでしょう。
パワーハラスメントの防止措置については来春には中小企業でも義務化されますが、本調査では各社で行われている「ハラスメントの理解促進に効果的な取組み事例」も掲載されており、参考になります。
参考リンク
一般社団法人日本経済団体連合会「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/114.pdf
(大津章敬)