厚労省から公表された解雇無効時の金銭救済制度に関する検討会報告書
企業では、ときに様々な理由から従業員を解雇せざるを得ないことがあります。解雇された従業員はそれを不服として、労働契約上の地位があるとしてその確認を求め裁判を起こすことがありますが、解雇が無効と判断された場合には、労働契約が存続していることになり、一般的には労働者の職場復帰や民法に基づく解雇時以降の賃金の支払いされることになります。
ただし、必ずしも職場復帰が行われるわけでなく、労使当事者の合意により和解等が成立した場合には解決金の支払による退職(合意解約)も行われています。今回この解決金の額にはばらつきがあることもあり、厚生労働省で「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が立ち上げられ検討が行われてきました。そして、先日、「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」報告書が公開されました。
報告書では、解雇無効時の金銭救済制度について、仮に制度を導入するとした場合に法技術的に取り得る仕組みや検討の方向性等に係る選択肢等を示されており、「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭を支払い、支払いによって労働契約が終了する仕組み」を念頭に置き、2つの構成(形成権構成および形成判決構成)について検討がなされました。権利の法的性質等、労働契約解消金の性質等、労働契約解消金の算定方法等の項目が整理されています。
現時点では検討会の報告書が出された状況ですが、今後、解雇無効時の金銭救済制度導入の是非や導入するとした場合の内容について、労働政策審議会において労使関係者も含めて検討を進めることが適当であるとまとめられており、審議が進んでいくこととなるのでしょう。
参考リンク
厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25037.html
(宮武貴美)