同一労働同一賃金「対応の目途が付いている」という企業は56.2%も、中小企業では遅れる対応

 いわゆる同一労働同一賃金は、法施行と新型コロナの感染拡大がちょうど重なってしまったこともあり、十分に対応が進んでいない印象を受けます。そこで今回は、日本・東京商工会議所が全国の中小企業6,007社(回答企業数3,001社)を対象に実施した「「コロナ禍における雇用・就業面での対応等に関する調査」の中から、同一労働同一賃金への対応状況を見ていきましょう。

 そのポイントを箇条書きにすると以下のようになっています。

  • 「同一労働同一賃金」について、「対象になりそうな非正規社員がいる」と回答した企業の割合は14.8%。
  • 「対象になりそうな非正規社員がいる」と回答した企業において、正社員と非正規社員の待遇差について、非正規社員から求めがあった場合、「客観的・合理的に説明ができる」と回答した企業の割合は41.1%。6人~10人の企業では23.1%。
  • 各種手当について、正社員のみに支給している割合は以下の通り。
      役職手当 72.6%
      退職手当 71.5%
      家族手当 62.0%
      住宅手当 36.9%
  • 一方、正社員、非正規社員のいずれにも支給しているという割合が高い手当等は以下のとおり。
      賞与  54.4%
      通勤手当 80.9%
  • 「同一労働同一賃金」の対応状況について、「対応の目途が付いている」と回答した企業は、2020年調査と比べて9.5ポイント増加の56.2%。「具体的な対応に関するけんとうをしている最中」が30.6%、「対応は必要だが、何をすべきか分からない」が11.9%。
  • この対応状況については従業員規模が小さいほど、対応が進んでおらず、従業員規模別で見た「対応の目途が付いている」の回答は以下のとおり。
     5人以下 20.0%
     6~10人 23.1%
     11~20人 43.7%
     21~50人 48.1%
     51~100人 57.9%
     101~300人 65.7%
     301人以上 71.4%

 やはり調査結果を見ても、同一労働同一賃金の対応が十分に進んでいないことが分かります。一方で、賞与については非正規社員にも支給する流れが出てきていることも分かりますが、物価上昇による実質的な賃金の目減りもあり、労働条件に関する不満も大きくなる時期となっています。指摘を受けてから対応するという姿勢では、従業員の離職などのリスクも高まります。まずは自社の課題を整理し、できるところからでも対応を進めていきましょう。


参考リンク
日本商工会議所「「コロナ禍における雇用・就業面での対応等に関する調査」の集計結果(2022/4/30)」
https://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2021/0430150001.html

(大津章敬)