新しい資本主義実現会議が示した「勤労者皆保険の実現」の概要
先日の記事「新しい資本主義実現会議が示した「男女間の賃金差異の開示義務化」の概要」では、新しい資本主義実現会議が2022年5月31日に公表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)」の中から、「男女間の賃金差異の開示義務化」を取り上げました。この「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は2022年6月7日に閣議決定されましたが、今回は、フリーランスなど、働き方の多様化が進む中で議論されている「勤労者皆保険の実現」について見てみることにしましょう。
- 働き方の多様化が進む中で、働き方に対して「中立」な社会保障制度の構築を進める必要がある。まずは、企業規模要件の段階的引下げ等を内容とする令和2年年金制度改正法に基づき、被用者保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大を着実に実施する。さらに、企業規模要件の撤廃も含めた見直しや非適用業種の見直し等を検討する。
- フリーランス・ギグワーカー等への社会保険の適用については、被用者性等をどう捉えるかの検討を行う。その上で、労働環境の変化等を念頭に置きながら、より幅広い社会保険の適用の在り方について総合的に検討を進める。
今年10月には社会保険の短時間労働者への適用拡大が行われますが、現状の改正法では50人以下企業への適用拡大までは含まれていませんでした。しかし、今回の計画案では、企業規模要件の撤廃についても検討するとありますので、中期的にはその方向で法改正が進められることが予想されます。
また、働き方の多様化の中で増加するフリーランスやギグワーカーに対しては、その保護の在り方が様々な観点から議論されていますが、社会保険の適用についても今後、仕組みの検討が始まるようです。
わが国が誇る皆保険制度ですが、非正規労働者の増加、そしていまは労働契約以外での働き方の増加で制度が現状と合わなくなってきており、その問題の解決が急がれます。
参考リンク
内閣官房「新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html
閣議決定(R4.6.7)「新しい資本主義実現会議「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai8/shiryou1.pdf
(大津章敬)