概要が見えてきた7月施行の「男女間賃金格差に係る情報の開示」

 2022年6月3日に決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」の中でもっとも注目を集めているのが、「男女間賃金格差に係る情報の開示」というトピックです。

 これについて、 女性版骨太の方針2022では、「正規・非正規雇用の日本の労働者の男女間賃金格差は、他の先進国と比較して大きい。また、日本の女性のパートタイム労働者比率は高い。男女間の賃金の差異について、以下のとおり、女性活躍推進法に基づき、開示の義務化を行う」とし、以下のポイントを示しています。

  • 情報開示は、連結ベースではなく、企業単体ごとに求める。ホールディングス(持株会社)も、当該企業について開示を行う。
  • 男女の賃金の差異は、全労働者について、絶対額ではなく、男性の賃金に対する女性の賃金の割合で開示を求めることとする。加えて、同様の割合を正規・非正規雇用に分けて、開示を求める。
    (注)現在の開示項目として、女性労働者の割合等について、企業の判断で、更に細かい雇用管理区分(正規雇用を更に正社員と勤務地限定社員に分ける等)で開示している場合があるが、男女の賃金の割合について、当該区分についても開示することは当然、可能とする。
  • 男女の賃金の差異の開示に際し、説明を追記したい企業のために、説明欄を設ける。
  • 対象事業主は、常時雇用する労働者 301人以上の事業主とする。101人~300人の事業主については、その施行後の状況等を踏まえ、検討を行う。
  • 金融商品取引法に基づく有価証券報告書の記載事項にも、女性活躍推進法に基づく開示の記載と同様のものを開示するよう求める。
  • 本年夏に、制度(省令)改正を実施し、施行する。初回の開示は、他の情報開示項目とあわせて、本年7月の施行後に締まる事業年度の実績を開示する。
  • 国・地方公共団体についても同様に女性活躍推進法に基づく開示を行う。【内閣府、金融庁、厚生労働省、全府省】

 このように7月に制度は施行され、その後の事業年度にあわせて開示が求められることになります。ここに記載されている省令改正の検討の資料が、先週金曜日(2022年6月17日)に開催された第49回労働政策審議会雇用環境・均等分科会において公表されました。そこにおいては事務局案として以下のような方向性が示されています。

  • 開示を求める区分:「全労働者 / 正規雇用労働者 / 非正規雇用労働者」を必須とする。
  • 今回、男女の賃金の差異の情報公表について、本年7月に施行することとされているが、初回の適用(公
    表)について、対象企業が実施できるスケジュールとなるよう、必要な措置を講ずる、ということ。
    ※事業年度が4月~翌3月の場合は、令和4年4月~令和5年3月分を令和5年4月以降に開示、事業年度が7月~翌6月の場合は、令和4年7月~令和5年6月分を令和5年7月以降に開示
  • 計算方法は、次の通りとする。なお、男女で計算方法を異なるものとしてはならない。
    ・賃金台帳を基に、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、全労働者について、それぞれ、男女別に、直近事業年度の賃金総額を計算し、人員数で除して平均年間賃金を算出する。その上で、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で除して100を乗じたもの(パーセント)を、男女の賃金の差異とする。
  • 企業による任意の追加的な情報公表の例
    ・ 自社における男女間賃金格差の背景事情。例えば、女性活躍推進の観点から、女性の新卒採用を強化した結果、前年と比べて相対的に賃金水準の低い女性労働者が増加し、男女賃金格差が前事業年度よりも拡大した、といった事情がある場合には、その旨を追加情報として公表する。
    ・ 男女の労働者について、属性(勤続年数、役職等)を同じくする者の間での賃金の差異を追加情報として公表する。
    ・ 有期・パート労働者を多数雇用している企業においては、(1)有期・パート労働者の契約期間・労働時間を正社員の契約期間・労働時間に換算する、(2)正社員、有期・パート労働者それぞれの賃金を1時間当たりの額に換算する、等の方法により男女の賃金の差異を算出し、追加情報として公表する。

 7月施行ですので、今後、短期間での動きが予想されますが、事業主による初回の情報公表が円滑に実施されるようにするため、給与計算ソフトウェア提供業者、HRテック業者等への情報提供等を速やかに開始するとしており、厚生労働省の本気を感じる内容となっています。


参考リンク
厚生労働省「第49回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26311.html?fbclid=IwAR3_4hshUpFl_rLOVNss0-1o2609aHGpeMSBuCu8VnPK1nH5pQnt21LQkJU
すべての女性が輝く社会づくり本部男女共同参画推進本部「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2022」
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/sokushin.html

(大津章敬)