障害者雇用における週10時間以上20時間未満の取扱い見直しの方向性
現行の障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度においては、週所定労働時間20時間未満での雇用は対象とされていませんが、今後、10時間以上20時間未満の障害者についてもその対象とするという方向での議論が進められています。今回は、2022年6月17日に厚生労働省労働政策審議会が、障害者雇用分科会からの報告を受け、厚生労働大臣に対して提出した今後の障害者雇用施策の充実強化についての意見書の中から、「週所定労働時間10時間以上20時間未満の障害者の取扱い」について取り上げます。
この報告書では、以下の方向性が示されています。
- 具体的には、週10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者は、その障害によって特に短い労働時間以外での労働が困難な状態にあると認められるため、特例的な取扱いとして、その雇用を実雇用率の算定対象に加えることが適当である。なお、A型の利用者は、週20時間未満であるか否かにかかわらず、利用者の希望に応じた労働時間や労働日数等での就労が可能となるよう支援を行うものであり、特例的な実雇用率算定により週20時間未満の障害者の雇用の機会を確保する必要性が高くないため、本取扱いを適用しないことが適当である。
- 算定に当たっては、1人をもって0.5カウントすることとし、また、週20時間以上の雇用への移行に要する期間には個人差があるとともに、障害特性から、中長期にわたり週20時間以上の雇用に移行できない者も一定程度存在するため、本取扱いは一律に適用期限を区切ることはしないことが適当である。
- ただし、職業的自立を促進する観点から、雇用義務の対象は週20時間以上の障害者としているが、今般、この取扱いは変更せず、新たに実雇用率の算定の対象として加える週20時間未満の障害者は雇用義務の対象としない、すなわち、雇用率の算定式には週20時間未満の障害者を含めないことが適当である。
- 週20時間未満の雇用に留め置かれないよう、障害者本人が労働時間の延長を希望する場合、事業主に対しその有する能力に応じた労働時間の延長について努力義務を課すことが適当である。
- 週20時間以上の就業が困難な者等を障害者雇用納付金、調整金の算定の対象とすることにより、当該者に対する就業機会の拡大を直接的に図ることが可能となることから、特例給付金は廃止することが適当である。
まだ報告という段階ではありますが、この方向での制度改定が見込まれます。
参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会障害者雇用分科会意見書~今後の障害者雇用施策の充実強化について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26265.html
(大津章敬)