骨太の方針2023のポイント(2)「家計所得の増大と分厚い中間層の形成」
2023年6月16日、経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)が閣議決定されました。今回の骨太の方針では大きな政策の転換が図られていますので、数回に亘って、そのポイントを取り上げています。第2回の今回は「家計所得の増大と分厚い中間層の形成」について取り上げます。
- 賃上げの流れの維持・拡大を図り、特に我が国の雇用の7割を占める中小企業が賃上げできる環境の整備に取り組むほか、最低賃金の引上げや同一労働・同一賃金制の施行の徹底と必要な制度見直しの検討等を通じて非正規雇用労働者の処遇改善を促し、我が国全体の賃金の底上げ等による家計所得の増大に取り組む。
- 中小企業等の賃上げの環境整備については、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇等の強化を行う。各サプライチェーンにおいて賃上げ原資となる付加価値の増大を図り、マークアップ率を高めるとともに、付加価値の適切な分配を促進するため、エネルギーコストや原材料費のみならず、賃上げ原資の確保も含めて適切な価格転嫁が行われるよう取引適正化の促進を強化する。
- 労務費の転嫁状況について業界ごとに実態調査を行った上で、労務費の転嫁の在り方について指針を年内にまとめる。
- 最低賃金については、昨年は過去最高の引上げ額となったが、今年は全国加重平均1,000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論を行う。
- 地域間格差に関しては、最低賃金の目安額を示すランク数を4つから3つに見直したところであり、今後とも、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る。今夏以降は、1,000円達成後の最低賃金引上げの方針についても、新しい資本主義実現会議で議論を行う。
- 家計の賃金所得とともに、金融資産所得を拡大することが重要であり、iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額及び受給開始年齢の上限引上げについて2024年中に結論を得るとともに、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充・恒久化、金融経済教育推進機構の設立、顧客本位の業務運営の推進等、「資産所得倍増プラン」を実行する。
- これらによる家計所得の増大と併せて、持続可能な社会保障制度の構築、少子化対策・こども政策の抜本強化、質の高い公教育の再生等に取り組むことを通じ、分厚い中間層を復活させ、格差の拡大と固定化による社会の分断を回避し、持続可能な経済社会の実現につなげる。
安倍政権による働き方改革の時代より「成長と分配の好循環」を実現すべく様々な施策が進められてきましたが、今春は大企業中心とはいえ、長年実現しなかった大幅な賃上げが行われ、これを継続していくことが大きな課題とされています。最低賃金につきましては7月下旬にも目安が示されますが、各種報道によれば今年、全国加重平均1,000円を達成する方向にあるようです。最低賃金の引上げ、そして実態としての初任給や中途雇入れ賃金の上昇が見られます。今後、人材を採用・定着させるためには賃上げが重要となります。その原資を確保するためにも生産性を高めていきましょう。
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2023年6月19日「骨太の方針2023のポイント(1)三位一体の労働市場改革」
https://roumu.com/archives/117735.html
参考リンク
経済財政運営と改革の基本方針2023(2023/6/16)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2023/2023_basicpolicies_ja.pdf
首相官邸「経済財政諮問会議・新しい資本主義実現会議合同会議(2023/6/16)」
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202306/16keizai_shihon.html
(大津章敬)