225社が回答した事案ごとの懲戒処分の適用判断
人事労務管理の実務を行う中では、どうしても一定確率で懲戒処分を検討せざるを得ないような事態に遭遇することになります。そんなときに悩んでしまうのが、どの程度の処分を行えば妥当なのだろうかということではないかと思います。実際に多くの企業からそのような相談を受けていますが、今回は労務行政研究所が行った「企業における懲戒制度の最新実態」調査の結果についてご紹介したいと思います。この調査は、各企業の懲戒制度の内容や、30のケース別に見た懲戒処分の適用判断などが調査されています。なお、今回の調査の対象は、全国証券市場の上場企業3,794社と、上場企業に匹敵する非上場企業1,600社の合計5,394社で、集計対象は前記調査対象のうち、回答のあった225社となっています。
これによれば、「懲戒解雇」を適用するという回答が多かったケースの上位は以下のようになっています。
- 75.9% 売上金100万円を使い込んだ
- 74.1% 無断欠勤が2週間に及んだ
- 69.4% 社外秘の重要機密事項を意図的に漏えいさせた
- 60.2% 業務に重大な支障を来すような経歴詐称があった
- 59.7% 満員電車で痴漢行為をして鉄道警察に捕まり、本人も認めた
- 59.4% 終業後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された
- 52.0% 営業外勤者が業務中に自動車で通行人をはねて死亡させ、本人の過失100%であった。
- 50.3% 取引先から個人的に謝礼金等を受領していた
- 49.2% 反社会的勢力との交友が発覚した
- 47.7% 社内で私的な理由から同僚に暴力を振るい、全治10日の傷を負わせた
現実的な実務では、こうしたケースよりも軽い事案での対応に困ることも多いと思います。その判断の際には、こういった調査結果も参考にされるとよいでしょう。
参考リンク
労務行政研究所「企業における懲戒制度の最新実態(2023/8/30)」
https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000085594.pdf
(大津章敬)