経産省が公開した「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」
経済産業省は、仕事をしながら家族の介護に従事する、いわゆる「ビジネスケアラー」を取り巻く諸課題への対応として、より幅広い企業が両立支援に取り組むことを促すため、企業経営における仕事と介護の両立支援が必要となる背景・意義や両立支援の進め方などをまとめた企業経営層向けのガイドラインを公表しました。
仕事をしながら介護に従事する、いわゆるビジネスケアラーの数は増加傾向であり、2030年時点では約318万人に上り、経済損失額は約9兆円と試算されている背景があります。このような介護に起因した労働総量や生産性の減少による労働損失の影響をより少なくすることなどが、今後の企業経営にとっても重要となります。
ガイドラインでは、経営者層を対象に、企業が取り組むべき事項を以下の3つのステップで、具体的に示しています。
[STEP1]経営層のコミットメント
仕事と介護の両立支援において全社的に取り組む意向を示す
□経営者自身が知る
「介護」を知り、企業活動への影響の可能性を認識しているか?
□経営者からのメッセージ発信
仕事と介護の両立施策推進に向けて、ポリシーを発信しているか?
□推進体制の整備
担当役員設置/担当者の指名、管理職層の巻き込みができているか?
[STEP 2]実態の把握と対応
組織内での仕事と介護の両立における影響·リスクを把握
□アンケート·聴取
社内の介護に関する状況をしっかりと把握できているか?
□人材戦略の具体化
介護を行う従業員が活躍できるよう人材戦略を設計できているか?
□適切な指標の設定
仕事と介護の両立支援に関して適切な指標を設定できているか?
[STEP 3]情報発信
企業がプッシュ型の情報発信を行うことで、従業員個人の将来的なリスクを低減
□基礎情報の提供
介護保険制度などの基礎情報をプッシュ型で提供できているか?
□研修の実施
全社員向けにリテラシー向上の研修や管理職向けの両立支援推進に関する研修の機会を提供できているか?
□相談先の明示
社内での相談先·プロセスを社員向けに明示的に伝えられているか?
このステップに加え、企業独自の取組の充実として以下が示されています。
[企業独自の取組の充実]
企業の実情·リソースに応じて検討·実施
※自社単体で実施が困難な場合は、外部リソースの活用も検討
□人事労務制度の充実
法定義務を超えた柔軟な働き方の推進、福利厚生による経済的な支援等
□個別相談の充実
外部の専門家設置、1on1、人事部·管理職との三者面談 等
□コミュニティ形成
精神的負担を軽減するため、介護経験者同士による対話の場づくり等
□効果検証
各施策の実施効果について、KPI達成状況等を踏まえた検証
今国会には、育児・介護休業法の改正法案も提出され、今後審議が始まります。成立すれば、介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の強化が企業に求められることます。このガイドラインの公表も含め、仕事と介護の両立支援は企業の大きな課題という認識を持って取り組みを進めることが求められています。
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2024年3月13日「国会に提出された改正育児・介護休業法等の法案内容」
https://roumu.com/archives/121290.html
参考リンク
経済産業省「「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します」
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240326003/20240326003.html
(宮武貴美)