従業員1人あたりの研修費用総額は3年連続増加-新入社員教育やキャリアデザイン・ライフプラン教育等に重点
コロナ禍に落ち込んだ企業の教育研修費用が回復しています。人的資本経営が重要視され、DX教育の強化などに取り組む企業が増えるなど、従業員の能力開発に大きな注目が集まっていますが、今回は産労総合研究所が行った「2024年度(第48回) 教育研修費用の実態調査」から、今後の教育研修に関する企業の意向についての結果を取り上げて見ていきましょう。なお、この調査は2024年6~7月に、上場企業および同社会員企業から任意抽出した約3,000社を対象に行われ、今回の結果はそのうち169社から回答を得たものとなっています。
調査結果の概要は以下のとおりです。
(1)従業員一人あたりの研修費用の推移
教育研修費用の総額を回答企業の正規従業員数で割った「従業員1人あたり研修費用」の2023年度実績額の平均は34,606円で、大きな減額となったコロナ禍の2020年以降、連続での増加となり、コロナ前の水準(2019年度 35,628円)にほぼ回復。規模別では、大企業41,050円(前回調査34,730円)、中堅企業32,268円(同31,326円)、中小企業31,087円(同30,636円)とすべての規模で増加している。
(2)教育研修費用総額の今後(1~3年)の方向性
今後(1~3年)の教育研修費用総額について、「かなり増加する見込み」という企業は8.9%、「やや増加する見込み」が50.6%で、合わせて59.5%と昨年に続き「増加」見込みが約6割に上った。これは、過去10年ほどで最も高い増加傾向となった昨年調査結果とほぼ同水準だった。
「増加」見込みとした企業の理由をみると、「人的資本への投資」や「DX教育の強化」を進めるため、また、「新規研修の実施」や「社員のスキル・知識の向上」のために投資を増やす予定といった内容があがっていた。
(3)2024年度(今年度)重点的に取り組む教育研修
最も多かったのが「新入社員教育」、次いで「中堅社員教育」(階層別教育)などと続き、概ね前年度と同じ結果となったが、今年初めて上位10項目入りしたのが「キャリアデザイン・ライフプラン教育(17%で5位)」だった。また、技術・技能者教育も昨年の11.1%(10位)から13.7%(8位)と割合・順位ともに上昇していた。
政府も推し進める人的資本経営を重視する企業が増加し、そうした企業において研修・教育体制の整備が進められています。今回の調査でも、今後研修費用を「増加」すると回答した企業がおよそ6割となっていますが、この人的資本への投資の流れは、今後さらに大きくなっていくことが予想されます。
参考リンク
産労総合研究所「2024年度(第48回) 教育研修費用の実態調査 結果(2024/10/9)」
https://www.e-sanro.net/share/pdf/research/pr_2410.pdf
(菊地利永子)