改正労働安全衛生法成立、多くは2026年4月1日施行へ

 先日(2025年5月8日)、衆議院本会議にて、改正労働安全衛生法及び作業環境測定法が可決、成立しました。詳細は今後、徐々に出て来ると思われますが、まずはその概要を確認しておきましょう。
■改正の趣旨
 多様な人材が安全に、かつ安心して働き続けられる職場環境の整備を推進するため、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進、職場のメンタルヘルス対策の推進、化学物質による健康障害防止対策等の推進、機械等による労働災害の防止の促進等、高年齢労働者の労働災害防止の推進等の措置を講ずる。

■改正の概要
1.個人事業者等に対する安全衛生対策の推進【労働安全衛生法】

  • 既存の労働災害防止対策に個人事業者等も取り込み、労働者のみならず個人事業者等による災害の防止を図るため、a. 注文者等が講ずべき措置(個人事業者等を含む作業従事者の混在作業による災害防止対策の強化など)を定め、併せてILO第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)の履行に必要な整備を行う。b. 個人事業者等自身が講ずべき措置(安全衛生教育の受講等)や業務上災害の報告制度等を定める。

2.職場のメンタルヘルス対策の推進【労働安全衛生法】

  • ストレスチェックについて、現在当分の間努力義務となっている労働者数50人未満の事業場についても実施を義務とする。その際、50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する。

3.化学物質による健康障害防止対策等の推進【労働安全衛生法、作業環境測定法】

  1. 化学物質の譲渡等実施者による危険性・有害性情報の通知義務違反に罰則を設ける。
  2. 化学物質の成分名が営業秘密である場合に、一定の有害性の低い物質に限り、代替化学名等の通知を認める。なお、代替を認める対象は成分名に限ることとし、人体に及ぼす作用や応急の措置等は対象としない。
  3. 個人ばく露測定について、作業環境測定の一つとして位置付け、作業環境測定士等による適切な実施の担保を図る。

4.機械等による労働災害の防止の促進等【労働安全衛生法】

  1. ボイラー、クレーン等に係る製造許可の一部(設計審査)や製造時等検査について、民間の登録機関が実施できる範囲を拡大する。
  2. 登録機関や検査業者の適正な業務実施のため、不正への対処や欠格要件を強化し、検査基準への遵守義務を課す。

5.高齢者の労働災害防止の推進【労働安全衛生法】

  • 高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施を事業者の努力義務とし、国が当該措置に関する指針を公表することとする。 等

■施行期日
令和8年4月1日(ただし、1aの一部は公布日、4bは令和8年1月1日、3cは令和8年10月1日、1bの一部は令和9年1月1日、1a及びbの一部は令和9年4月1日、2は公布後3年以内に政令で定める日、3aは公布後5年以内に政令で定める日)

 今回の改正の目玉は1.のフリーランスへの対応と、2.の50人未満事業場でのストレスチェックの義務化でしょう。今後、省令やガイドラインなどが示されることになろうかと思いますので注目しておきましょう。


参考リンク
厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案」
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/217.html

(大津章敬)