[年金改正法案①]賃金要件の撤廃と企業規模要件の撤廃

 2025年の通常国会に「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」(年金制度改正法案)が提出されました。今後、国会での審議が始まりますが、注目度の高い内容となっているため、法案段階ではありますが、法案内容で企業実務に大きな影響がある点について、数回の連載で確認していきます。

 現状、社会保険の適用事業所に勤務する従業員は、役員、正社員のほか、パートタイマー・アルバイト等でも、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数(以下、「週所定労働時間等」という)が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である人は、被保険者になります
 また、週所定労働時間等が正社員の4分の3未満であっても、50人を超える適用事業所に勤務し、以下の要件を満たす人は、短時間労働者として被保険者になります
 ①週の所定労働時間が20時間以上あること
 ②所定内賃金が月額8.8万円以上であること
 ③学生でないこと

 今回の年金制度改正法案では、このうち②の賃金要件を撤廃するとともに、「50人を超える適用事業所」という企業規模要件について、10年かけて段階的に対象を拡大。最終的には、すべての適用事業所が短時間労働者として社会保険に加入する内容になっています。

 なお、②の賃金要件は、全国の最低賃金の引上げの状況を見極めて、3年以内の廃止という内容であり、施行日は「公布から3年以内で政令の定める日」という内容になっています。


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2025年5月17日「注目の年金制度改正法案が国会提出されました」
https://roumu.com/archives/127635.html

参考リンク
日本年金機構「適用事業所と被保険者」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
厚生労働省「年金制度改正法案を国会に提出しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html
(宮武貴美)