ミドルの転職のきっかけは「会社の考え・風土に違和感を覚えた」が最多

 かつて転職上限年齢は30歳などと言われた時代もありましたが、近年は人手不足による転職市場の活況もあり、50代でも転職が普通に行われる時代となっています。そんなミドル世代が転職する背景にはなにがあるのでしょうか?本日はエン・ジャパンが実施した「ミドル世代の「転職理由」実態調査」の結果を見ていくことにしましょう。なお、ここでいう「ミドル世代」は35歳以上を指し、今回の調査の有効回答数は2,092名となっています。
(1)転職を考え始めた「きっかけ」
 転職を考え始めた「きっかけ」についての設問に対しては、30代、40代、50代のすべての年代において、「会社の考え・風土に違和感を覚えた」がもっとも多くの回答を集めました。これは、単に待遇面だけでなく、企業文化や価値観との適合が、ミドル世代の転職における重要な動機となっていることを表しています。特に経験を積んだミドル世代が、自身のキャリアを通じて培った価値観と企業の方向性とのずれを感じた際に、転職を検討する傾向が強いと言えるでしょう。

(2)転職を通じて「最も実現したいこと」
 この設問については、30代と40代では、「給与アップ」がもっとも多く挙げられ、経済的な安定や向上を求める傾向が強いことが示されました。この年代は、家庭を持つなどライフステージの変化が大きい時期であり、収入の増加が生活の質や将来設計に直結すると考えている可能性が高いと考えられます。一方で、50代では、「経験・能力を活かせる転職」が最多の回答となりました。これは、キャリアの最終盤に差し掛かるこの年代が、単なる給与だけでなく、これまで培ってきた専門性や経験を最大限に発揮できる環境を重視していることを示しており、実際にこの世代である私も共感できる結果であります。自己実現や社会貢献といった側面が、この年代の転職動機に大きく影響しているのでしょう。

(3)転職を検討する上で抱える「不安要素」
 この設問については、30代と40代は「経験が通用するか」という点をもっとも不安視しているのに対し、50代は「年齢」をもっとも不安視しており、年齢が転職活動における障壁となることへの懸念が大きいことが分かります。
 
 今回の調査で興味深いのは、ミドル世代の約7割が「20代の頃に比べて転職理由に変化を感じる」と回答していることです。これは、キャリアの初期段階と成熟段階とで、仕事に対する価値観や優先順位が変化していくことを明確に示しています。例えば、若い頃は給与やキャリアアップといった目に見える成果を重視していたが、年齢を重ねるにつれて、仕事の内容、ワークライフバランス、企業の理念、自身の成長機会といった、より本質的な要素を重視するようになる傾向が考えられます。この変化の認識は、企業がミドル世代の定着、そして採用を検討する上で、彼らが何を求めているのかを深く理解することの重要性を示しています。

 企業側は、ミドル世代が転職に求めるものが多様化していること、特に年齢や経験に応じた異なる価値観を持っていることを認識し、採用戦略や人材育成、職場環境の整備に活かすことが求められるでしょう。また、転職を考えるミドル世代自身も、自身のキャリアプランや価値観を深く見つめ直し、年代ごとの傾向を踏まえた上で、最適な転職先を見つけるための戦略を練る必要があると言えます。


参考リンク
エン・ジャパン「ミドル世代の「転職理由」実態調査」
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/42498.html

(大津章敬)