高年齢者の労働災害防止のための指針が公示

先日(2026年2月10日)、厚生労働省より「高年齢者の労働災害防止のための指針」が公示されました。少子高齢化に伴い、高年齢労働者が貴重な戦力となる中で、その特性に配慮した安全安心な職場づくりは、企業の持続可能性に直結する重要な課題です。以下では本指針に基づき、人事労務担当者が取り組むべき実務のポイントを解説します。
(1)安全衛生管理体制の再構築
まずは組織として高年齢者の安全を守る姿勢を明確にすることが求められます。具体的には以下のような対応を行うことが重要です。
〇経営トップによる方針表明:
経営者自らが、高年齢者の労働災害防止を盛り込んだ安全衛生方針を表明し、社内の安全意識を高めることが求められます。
〇実施体制の明確化:
対策を担当する組織や担当者を指定し、責任の所在を明らかにします。
〇労使での対話:
安全衛生委員会等での調査審議に加え、委員会がない事業場でも労働者の意見を聴く機会を設け、現場の負担や不安を吸い上げることが有効です。

(2)高年齢者の特性を捉えたリスクアセスメント
身体機能の変化(視力、筋力、バランス能力の低下等)を前提としたリスクの洗い出しが必要です。
〇災害事例の活用:
過去の災害事例やヒヤリハットから危険源を特定し、優先順位をつけて対策を検討します。
〇多様な視点:
フレイル(加齢による心身の衰え)やロコモティブシンドローム等への配慮も盛り込むことが望まれます。

(3)具体的な職場環境の改善(ハード・ソフト面)
リスクアセスメントの結果に基づき、以下の対策を実情に応じて実施します。
〇設備・装置の導入:
作業場所の照度確保、手すりの設置や段差解消、滑り止め素材の採用など、転倒・墜落防止を徹底します。また、アシストスーツや移乗支援機器による身体負荷の軽減も有効です。
〇作業管理の工夫:
高年齢者の特性に合わせ、ゆとりのある作業スピードの設定や、短時間勤務・隔日勤務といった勤務形態の柔軟化を検討します。

(4)健康・体力の状況把握と教育の徹底
高年齢者は健康状態の個人差が大きいため、個別のフォローアップが欠かせません。
〇体力チェックの実施:
事業者と本人の双方が客観的に体力を把握するため、定期的な体力チェックの実施が望まれます。
〇丁寧な安全教育:
写真、図、映像を活用し、十分な時間をかけて教育を行います。特に未経験の業種に従事する場合は、より重点的な訓練が必要です。

高年齢者が安心して働ける環境は、結果として全世代にとって働きやすい職場となります。この指針には具体的な取り組み例も記載されていますので、これを参考にして、貴社の安全衛生方針に「年齢に関わらず健康に安心して働ける」という視点を盛り込むことから始めてみてはいかがでしょうか。


参考リンク
厚生労働省「「高年齢者の労働災害防止のための指針」について(公示)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/newpage_00010.html

(大津章敬)