厚生労働省 緊急時における雇用調整助成金の在り方を3つの類型に分けて整理

リーマンショック、そして新型コロナウイルスの感染拡大の際には、雇用調整助成金の支給要件緩和が行われ、多くの企業で受給されました。先日より労働政策審議会職業安定分科会において、その効果の検証を行うと共に、今後の緊急時における雇用調整助成金の在り方についての方向性・考え方が取りまとめられました。
(1)特例措置の意義と基本的な考え方
緊急時には、社会インフラやサプライチェーンが広範にダメージを受けるため、平時を超える手厚い支援(特例措置)で雇用を強力に維持し、事業主の経営改善や労働者の再就職準備期間を確保することが有効 。一方で、長期化による労働移動の阻害や不正受給のリスクを考慮し、「迅速支給」と「適正支給」のバランス、および円滑な労働移動の促進を重視する必要がある。

(2)クライシス別・今後の運用の方向性
今後の緊急対応は、危機の性質に応じて以下の3つに分類し、以下のような方向性が示されています。
a.経済変動(世界規模の危機等)

  • 危機の初期に高い雇用維持効果の一方、受給終了時に離職が集中しており、雇用調整助成金により全ての雇用を維持することは実際には困難
  • 特例措置の効果を、一定期間の強力な雇用維持に加え、雇用失業情勢の厳しい時期の分散化と雇用失業情勢が落ち着いた状態での円滑な労働移動の促進と捉えることが適当
  • これらを踏まえ、特例措置の内容や期間について判断を行うに当たっては、経済・労働市場のデータ等を注視しながら、現場を熟知する公労使が分科会において議論を行い、判断することが適当

b.自然災害等

  • 近年、頻発する災害に対して、迅速な初動が必要であること、特例実施に関する予測可能性を高めることが円滑な対応につながるため、定着してきた上記の運用を基本方針として定めることが有意義
  • その上で、個々の事例への判断に当たっては、被災地の状況等も踏まえ、分科会において公労使が議論の上で適切に判断

c.コロナ禍など異例の緊急対応を要する危機

  • コロナ期の対応は、感染防止等のため政府が経済・社会活動や移動を制限せざるをえず、事業活動が急激に縮小すると言う異例の事態に迅速に対応するため、従来の雇用安定事業による雇用対策の範疇に必ずしもおさまらない緊急対応を行ったもの
  • 再び異例の危機が発生した場合には①経済変動や②自然災害等とは対応が異なることも考えられ、国民全体の共同連帯によって対処すべき状況と考えられる場合は、政府全体で合理的かつ効果的な対応の在り方について検討を行うことを望む意見が多くあった
  • その上で、仮に、雇用調整助成金の特例措置が求められる場合は、特例措置の効果を、一定期間の強力な雇用維持に加え、雇用失業情勢の厳しい時期の分散化と情勢が落ち着いた状態での円滑な労働移動の促進と捉えた上で、危機の状況に応じ順次必要な見直しを行うとともに、雇用保険二事業が本来目的とする事業を行えない状況とならないよう、公労使が二事業・雇用保険財政の財政状況など注視し議論する
  • コロナ期の分科会における公労使の議論のタイミングが必ずしも適切でない場合があったとの指摘を踏まえ公労使の検討や議論が十分反映されるよう分科会の柔軟な開催方法等の工夫を講じる

このような緊急措置が発動されることがないように願いたいですが、実際にそうした自体が生じた際には今回の議論が活かされ、効果的な支援に繋がることを期待したいところです。


参考リンク
厚生労働省「「緊急時における雇用調整助成金の在り方について」報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71906.html

(大津章敬)