厚生労働省「令和8年度地方労働行政運営方針」を公表

厚生労働省は、令和8年5月10日付けで「令和8年度地方労働行政運営方針」を策定しました。

令和7年度の内容と比較すると、令和8年度の方針は、前年度の「三位一体の労働市場改革」を継承しつつ、深刻化する労働供給制約(人手不足)への対応をより具体化・加速させる内容となっています。以下ではそのポイントを確認しましょう。
1. 賃金引上げと「年収の壁」対策の深化
令和7年度から続く賃上げの流れを強化し、最低賃金の全国平均1,500円という高い目標達成に向けた環境整備が強調されています 。

  • 「年収の壁」への新たな支援: 令和7年7月に新設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」などの活用勧奨が令和8年度の取組に明記されました 。
  • 不合理な待遇差の解消: 同一労働同一賃金の施行5年後見直しを踏まえた指針改正への対応と、正社員との待遇差に関する「理由説明」が不十分な企業への点検要請が強化されます 。

2. リ・スキリングと「ジョブ型人事」の本格普及
令和8年度は、個人の学び直しを支援する制度がより具体的に稼働します。

  • 新たな給付・融資制度の普及: 令和7年10月に創設された「教育訓練休暇給付金」や「リ・スキリング等教育訓練支援融資」の周知・活用が重点課題となっています 。
  • 非正規雇用者向け訓練の本格実施: 働きながら学びやすい職業訓練の本格実施が令和8年度の項目として追加されました 。
  • 全世代型国民運動の展開: 全世代のリ・スキリングを促進する「国民運動」の実施が新たに盛り込まれています 。

3. 分野別の人手不足対策(医療・介護・保育等)
人手不足対策において、令和8年度は「医療・福祉ささえる求人充足プロジェクト」など、特定分野へのアウトリーチ支援が強化される点が特徴です 。

  • スポットワークへの対応: 多様な働き方の広がりを受け、いわゆる「スポットワーク」の雇用仲介事業者への対応が令和8年度方針に明記されました 。

4. 職場環境の整備とハラスメント対策

  • カスタマーハラスメント対策: 前年度に引き続き重視されていますが、令和8年度は「求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策」が項目に加わり、より広い範囲でのハラスメント防止が求められています 。
  • 熱中症予防の義務化: 令和7年6月に施行された改正労働安全衛生規則に基づき、報告体制の整備や実施手順の作成など、事業者の義務履行確保が厳格に指導されます 。

各都道府県労働局においては、この運営方針を踏まえつつ、各局内の管内事情に即した重点課題・対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることとしていますが、令和8年度は、「賃上げ原資の確保(価格転嫁)」と「リ・スキリングによる生産性向上」がセットで求められます。特に同一労働同一賃金に関する再点検、熱中症対策の規定整備など、法改正に合わせた実務対応を早期に進めることが重要となるでしょう。


参考リンク
厚生労働省「「令和8年度地方労働行政運営方針」の策定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72345.html

(大津章敬)