厚生労働省「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定
人口減少と高齢化が進むわが国においては、高齢者の活用が大きなテーマとなっています。こうした状況を受け、厚生労働省では、令和8年度から令和11年度までの4年間にわたる高年齢者の就業機会の増大に関する目標を設定するとともに、高年齢者等の職業の安定に関する施策の基本等を示した新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定しました。
この新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」は、人口減少と人手不足が深刻化する中、本方針は「年齢に関わりなく、希望や能力に応じて活躍し続けられる環境整備」を重要課題に掲げています 。
1.高年齢者雇用・就業確保措置の徹底
- 65歳までの雇用確保(義務):令和7年4月から経過措置が終了し、希望者全員を対象とする「65歳までの雇用確保措置」が全面的に施行されています 。企業には確実な実施が求められます。
- 70歳までの就業確保(努力義務):70歳までの就業機会確保について、実施率を2029年までに40.0%以上にする目標が掲げられました 。これには定年引上げや継続雇用のほか、業務委託等の「創業支援等措置」も含まれますが、労働者保護の観点から適切な運用が求められます 。
2.処遇改善と賃金体系の見直し
- 役割・能力給への移行:継続雇用者のモチベーション維持のため、職務・能力・成果を重視した評価・報酬体系への見直しが推奨されています 。
- 不合理な待遇差の解消:定年後に継続雇用される有期雇用労働者に対し、正社員との間の不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金」の履行確保が徹底されます 。
3.リスキリングとキャリア支援
- 職業能力開発:高年齢者の受講率が低い現状を踏まえ、デジタルスキル習得を含むリスキリング(学び直し)や、OJTを組み込んだ実践的な訓練機会の提供が求められています 。
- キャリア形成の援助:労働者が早い段階から高齢期を見据えたキャリアプランを作成できるよう、情報の提供や相談体制の整備を行うことが事業主の努力義務となります 。
4.安全衛生対策の強化(労働安全衛生法の改正)
- 労働災害防止の努力義務:高年齢者は労働災害発生率が高い傾向にあります 。改正労働安全衛生法により、事業主には高年齢者の身体的特性(体力・視力等の低下)に配慮した作業環境の改善や措置を講ずる努力義務が課されています 。
5.再就職支援の充実
- 求職活動支援書の交付:離職を予定する高年齢者が希望する場合、事業主は能力や職務経歴を記載した「求職活動支援書」を速やかに作成・交付することが事業主の努力義務となります 。
わが国では今後、団塊のジュニア世代が60歳に到達することとなります。少子化により労働力人口の減少が進む中、当面はこの世代の活躍を促進し、雇用を確保しながら、国としても企業としても人に頼らない仕組みの構築を進めていく必要があります。これららは単なる「雇用維持」から、高年齢者が能力を発揮し、成果に貢献できる環境づくりへのシフトが重要となります。
参考リンク
厚生労働省「新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71908.html
(大津章敬)

