アルバイトの4人に1人が被害に!改正法下で問われるカスハラから現場を守る組織体制

10月からカスハラ対策の実施が義務化されますが、特に立場が弱く、顧客接点で働く傾向が強いアルバイトではこの問題が多く発生しているようです。そこで本日はマイナビの「アルバイト就業者のカスタマーハラスメント実態調査(2026年)」を見ると、アルバイト就業者の24.9%(およそ4人に1人)が「直近1年以内にカスハラを受けたことがある」と回答しました。職種別では「販売・接客・サービス(28.0%)」や「飲食・フード(26.8%)」など、顧客との接触頻度が高い職種で被害が目立っています。

法改正により企業への対策義務化が進む中、経営者・人事担当者がいま把握すべき現場の実態と、求められる組織的アプローチについて解説します。
1. 理不尽な怒鳴り声だけではない。現場を壊す「心と意欲の損壊」
カスハラ被害の内容として最も多かったのは「大きな怒鳴り声をあげられた(39.4%)」、次いで「理不尽な要望を繰り返し問い合わせられた(30.0%)」「人格の否定・侮辱的発言(24.0%)」でした。また、医療・介護・保育分野ではセクハラ被害も同水準で報告されるなど、職種特性に応じた多様なハラスメントが発生しています。

深刻なのは、被害が与える「心理的・組織的ダメージ」の大きさです。カスハラ経験者の68.1%が「仕事へのやる気が下がった」と回答し、65.9%が「精神的ストレスになった」、そして57.0%が「仕事を辞めたいと感じた」と訴えています。非正規雇用労働者にとって、顧客からの理不尽な攻撃は単なる「不快な出来事」にとどまらず、勤務継続への意欲そのものを挫く決定打となり得ます。ただでさえ厳しいアルバイトの採用・定着において、カスハラ放置は致命的な人材流出リスク(離職・人手不足)へ直結しているのです。

2. 従業員が求めるのは「毅然とした組織の守り」
調査では、従業員が「安心して働くためにあると良いと思う取り組み」についても尋ねています。最も支持を集めたのは「警察や行政との連携体制の構築(30.3%)」でした。これに続き、「社内相談窓口の設置(24.0%)」、「通話録音や防犯カメラ等による記録(21.5%)」、「発生時の記録・報告システムの導入(21.5%)」が上位に並びました。現場の従業員が切望しているのは、「お客様第一主義」という言葉の陰で個人に過度な忍耐を強いる体質からの脱却であり、「悪質な事案には組織として毅然と介入し、しかるべき法的手続きや警察連携も辞さない」という企業の明確な姿勢です。

3. 人事担当者が今すぐ取り組むべき3つのアクション
改正労働施策総合推進法により、カスハラ対策はすべての事業者において配慮・措置義務の対象となっています。現場を孤立させないため、企業としていま優先して進めるべき実務ポイントは以下の3点です。
(1)基本方針の策定と明確なメッセージ発信
顧客対応のバウンダリー(許容限界)を明文化した「カスハラ防止基本方針」を作成し、社内外に宣言します。「不当な要求や人権を侵害する行為には屈しない」というメッセージは、現場で働くアルバイト従業員に大きな安心感を与えます。
(2)証拠化・報告スキームのデジタル化と平易化
防犯カメラや録音機器の導入・運用のほか、スマホ等から簡易に入力できる「ハラスメント報告システム」を整えます。「いつ・誰から・どのような被害を受けたか」を素早くログに残せる仕組みが、その後の法的対応や行政連携をスムーズにします。
(3)現場店長・正社員向けの「エスカレーション教育」
アルバイト従業員が一人で対応を抱え込まず、すぐに店長や本部に引き継げる初期対応のマニュアル化とトレーニングを徹底します。被害発生直後のメンタルケア体制の整備も不可欠です。

カスタマーハラスメントへの対策は、単なるトラブル処理ではありません。現場で働く従業員の安全と尊厳を守り、エンゲージメントを高めるための「重要な人的資本投資」です。「現場に任せる」対応から脱却し、組織が一丸となって従業員を守るシールド(盾)となること。それこそが、選ばれる職場をつくり、持続可能な事業運営を実現する鍵となります。


参考リンク
マイナビ「アルバイト就業者のカスタマーハラスメント実態調査(2026年)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260819_113833/

(大津章敬)