スポットワーク活用企業におけるコンプライアンス上の課題
人手不足の長期化に伴い、アプリ等を介して単発・短時間で働く「スキマバイト(スポットワーカー)」の活用が広がっています。そこで本日は、東京商工リサーチの「2026年10月 企業の「スキマバイト」に関するアンケート調査」から、その現状と課題について見ていこうと思います。
本調査(2026年10月発表)によると、スキマバイトを活用している企業は全体の4.6%とそれほど多くはありません。活用している割合は業種によるバラツキが大きく、「農・林・漁・鉱業」が12.7%、「運輸業」が12.1%、「サービス業他」の8.6%、「小売業」が6.6%であるのに対し、「建設業」は1.4%に止まっています。
今回の調査で注目すべきは、スポットワークの手軽さと利便性に目を奪われるあまり、企業として果たすべき法的義務や安全管理がおろそかになっている実態です。特に「安全衛生教育」と「社会保険・直接雇用のルール把握」においてはコンプライアンス上の課題が大きい結果となっています。
(1)安全衛生教育
スポットワークの活用において、労働安全衛生法に基づく「雇い入れ時の安全衛生教育」の実施状況を問う設問については、49.2%が実施していないと回答しています。これを規模別に見ると、大企業の実施率が73.3%であるのに対し、中小企業では48.9%にとどまり、特に中小企業において課題が大きいことが分かります。
スポットワーカーは自社の職場環境や機械操作、避難ルートに慣れていないため、常勤社員以上に事故やケガのリスクが高いのが実態です。万が一、作業中に労災事故が発生した場合、教育を怠っていた企業は安全配慮義務違反に問われ、損害賠償請求や社会的信用の失墜といった重大なリスクを負うことになります。スポットワークを活用する以上、この点の改善が確実に求められます。
(2)直接雇用の意識
「スキマバイトで受け入れたスポットワーカーは貴社との直接雇用になるため、就業時間や期間によって雇用保険や社会保険の加入、有給付与の対象となる場合があります。このことをご存じですか?」という設問に対しては、活用企業の25.7%が「知らない」と回答しています。スポットワーカーは労働者派遣ではなく、直接雇用であるという認識が大きく欠如していることが明らかになりました。ここにスポットワークの問題の多くが集約されているように感じます。
日雇い派遣の原則禁止、そしてデジタル技術の発展によるマッチング機能の強化により拡大しているスポットワークですが、その活用にあたっては直接雇用であることの認識を持ち、コンプライアンス上の対応を確実に行うようにしましょう。
参考リンク
東京商工リサーチ「2026年10月 企業の「スキマバイト」に関するアンケート調査」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203365_1527.html
(大津章敬)

