是正勧告とはなにか?
新聞紙上に時折、
“○○会社(結構有名な企業)従業員への未払い残業代として××億円 過去3ヶ月に遡って支払い命令”
というような記事が掲載されることがあります。昨年以降、特に名古屋の某労働基準監督署管内の有名企業が連続して告発されたことは記憶に新しいのではないでしょうか。そこで本日はこのような労働基準監督官による調査について、その基本をお話しようと思います。
そもそも労働基準監督官には労働基準法でその調査等に関する権限が規定されています。
■労働基準法101条
労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の付属施設に臨検(※)し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
※臨検…法違反があるかどうか事業場に立ち入って調査すること
■労働基準法102条
労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。
※ただし、司法事件として強制調査を行うに際しては、裁判官の発する令状を必要とする。
労働基準監督官の臨検が入った場合、会社側に労働基準法に違反する事項があれば、その違反事項に関する「是正勧告書」が交付されます。そこには違反事項の内容と根拠条文、是正期日が定められ、同時に交付される「是正報告書」にて後日報告を行うことが求められています。是正勧告書で指摘されるのは、本来備えるべき書類(労働者名簿や就業規則等)を備えていなかった、協定類を提出していなかった、不払いの時間外手当があった、法定の健康診断を受けさせていなかったといった内容が中心となっています。なお、この是正勧告は、あくまで勧告であり、強制力はないものではありますが、勧告に従わなかったり、また虚偽の報告をした場合などは悪質な法違反があったとして、検察庁に書類送検されることもあります。
ちなみに是正勧告書に似たものとして、「指導票」というものがありますが、これは労働基準法違反ではなくても、改善すべき必要がある事項がある際に交付されるものです。
労働基準監督署の調査は従業員の匿名での告発が発端となって行われることが多いのですが、最近は労働基準監督署が特定の業界などに一斉調査を行うことも増えています。いま一度、自社の労務管理体制に問題がないか、確認されてみては如何でしょうか。
(労使コミュニケーションチーム)