派遣契約が中途解除されると、派遣労働者は解雇されるのか
近年、労働形態の多様化が進んでいますが、その中でも派遣労働の増加には著しいものがあります。それに伴い、派遣労働者に関する労働トラブルも急増しています。そこで今回は厚生労働省制作の「派遣労働者として働くためのチェックリスト」の中から、派遣労働者の契約期間途中の契約解除について取り上げてみようと思います。
そもそも派遣契約は、「派遣元と派遣先との労働者派遣契約」と「派遣元と派遣労働者との雇用契約」という2つの別個の契約から成り立っています。よって前者の企業間での労働者派遣契約がなんらかの理由により解除されるとしても、後者の派遣労働者と派遣元事業主(派遣会社)との雇用契約は継続しているということになります。つまり、労働者派遣契約が中途で解除されたとしても、派遣労働者は直ちに解雇されるものではなく、また労働者派遣契約の解除に伴って、派遣労働者と派遣元事業主との間の労働契約関係が当然に短縮されるものではないのです。
派遣元指針では、「派遣元事業主は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該労働者派遣契約にかかる派遣先と連携して、当然派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受ける等により、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。また、労働者派遣契約の解除に伴い派遣元事業主が派遣労働者を解雇しようとする場合には、派遣元は労働基準法に基づく責任を果たすこと。」とされています。このように労働者派遣契約の解除に当たっては、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じる必要があるとされています。また、派遣先に起因する事由による場合には、派遣先もまた派遣労働者の雇用の安定を図るための措置を講じなければなりません。
それでは、派遣労働者と派遣元事業主との間に「派遣先との派遣契約が解除された場合は、雇用契約も終了する」と派遣元と派遣労働者との雇用契約の終了と派遣先との派遣契約の終了を一致させている場合は、当該派遣先の業務への労働者派遣の終了とともに雇用契約も終了することになるでしょうか。このような場合でも、この雇用契約の終了は実質的な解雇と同様に考えられ、労働基準法の解雇ルールが適用されるとともに、30日前予告あるいは解雇予告手当の支払い等、所定の手続きが必要となります。また、途中解約による派遣雇用契約終了の合意がない場合には、その残余期間について雇用義務があるため、当該派遣労働者を別の業務に派遣し、雇用継続のための措置をとる必要があり、それができない場合は使用者の責に帰すべき休業として平均賃金の60%の休業手当を支給することが必要となります。
昨年の労働者派遣法の改正指針では、「派遣元事業主は労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、当該労働者の希望および労働者派遣契約における労働者派遣の期間を勘案して、雇用契約の期間について、当該期間を当該労働者派遣契約における労働者派遣の期間とあわせる等、派遣労働者の雇用の安定をはかるために必要な配慮をするよう努めること」という内容が追加されています。また、派遣先についても、派遣労働者の雇用の安定を図るため、労働者派遣契約に際して配慮すべきことが指針に加えられました。すなわち、派遣元事業主および派遣先双方が派遣労働者の雇用の安定が図られるように必要な配慮をするよう勤めることが明確化されました。派遣労働者というと不安定な労働条件のもとで働くというイメージが持たれがちですが、派遣元事業主はもとより、派遣労働者を必要とする派遣先も十分な配慮が求められています。
(労働契約チーム)