年俸制適用者の割増賃金算定
年俸制の場合には、毎月支給される給与だけではなく、賞与も含めてその金額が設定されている場合が多く見られますが、そうした場合の割増賃金はどのように算定するのでしょうか。
この点について、賞与を含めた年俸額を12等分し、年俸額の12分の1を毎月の給与として支払っている場合は、賞与部分についても割増賃金の算定に含まれます。また、年俸額の16分の1を毎月の給与として支払い、残りの16分の4を賞与として年2回、各16分の2ずつ支払っている場合でも、年俸額の12分の1を月の賃金額として、割増賃金額を算定しなくてはなりません。
割増賃金額を算定する場合には、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金については、その算定基礎から除外されることとされており、通常、賞与は1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金とされており、割増賃金の算定から除外されています。しかし、年俸制の場合、通常の賃金制度における賞与とは取扱いが異なる場合があります。行政解釈によると「賞与とは定期又臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいう事。定期的に支給され、かつ、その支給が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とはみなされないこと」とされているからです。(昭22.9.13 発基第17号)
年俸制における割増賃金の行政解釈は「年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合の賞与部分は上記の「賞与」に該当しない。したがって、賞与部分を含めて当該確定した年俸額を支払う必要がある」とされています。(平12.3.8 基収第78号)しかし、毎月の給与部分のみを年俸制として、賞与は別途、年度や半期ごとの業績や評価などを考慮して、その都度、額を決定する方法をとっている場合には、その賞与は割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外することが可能となります。
(日比彩恵子)