2007年問題を前にベテラン社員からの技能の伝承を如何に進めるか

 2007年から2010年にかけて団塊世代の定年退職がピークを迎える2007年問題が話題になっています。この団塊の世代の大量退職により、企業においては深刻な労働力不足に陥ると警鐘が鳴らされていますが、それと同じレベルで捉えなければならないのが、次の世代へ如何にベテラン社員の暗黙知を含む技能の伝承を進めるかという問題でしょう。事実、内閣府が企業に対して行ったアンケート調査では調査に回答した企業のうち、約46%の企業が「技術・技能の伝承」が「かなり困難化する」「多少困難化する」と回答しています。


 平成18年4月1日より、65歳までの高齢者雇用確保措置が義務付けられますが、高齢者の労働力を活用するうえで、ベテラン社員の長年の経験による技術・技能や知識は貴重なものであり、その伝承は高齢者に対して一番期待される役割ではないでしょうか。実際に高齢者を雇用し技能・技術の伝承が成功した例として、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が発行する雑誌「エルダー」2004年10月号で紹介された奈良県のある会社は、高齢者と若者を組み合わせた班編成で土木技術に関する技術・知識の伝承に効果を上げています。この会社では高齢者にも土木施工管理技士、建築施工管理技士、建築士などの資格取得を推進、その結果資格を取得した人も現れ、会社全体のレベルアップになり、また高齢者の体力への負担を減らすため設備を改善した結果、全体の安全対策の向上にもなったということです。


 高齢者の雇用制度はそれぞれの企業に合わせて作らなければなりませんが、高齢者は就業意識、能力、健康など個人差が大きく、その人それぞれのライフプランもあり、雇用の仕組み自体が柔軟でなければ高齢者を労働力としてうまく活用することができません。独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構ではワークシェアリングや設備・作業の改善などを行い、高齢者の活用に意欲的に取り組む企業の実例が公開されていますので、参考にされてはいかがでしょうか。


(土方憲子)