仮眠時間は労働時間か休憩時間か?
仮眠時間について、それを労働時間と扱うのか、休憩時間と扱うのかという点が、実務上問題とされることがよくあります。労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいますので、仮眠時間でも労働から解放されて睡眠を取るに過ぎない場合は休憩時間に該当しますが、仮眠時間中でも電話等何かあった場合には対応が求められる場合は、基本的には労働時間(手待時間)に該当します。
この点に関し、突発の業務が発生した場合の対応を求められていたため、仮眠時間も労働時間とされた判例がありますので、ご紹介します。
■日本郵便逓送事件(京都地判 平12.12.22)
労働時間は、形式的には労働者が使用者の拘束下にある時間のうち休憩時間を除いた実労働時間をいうところ、ここにいう休憩時間とは、就業規則等で休憩時間とされている時間を指すのではなく、現実に労働者が自由に利用することができる時間を指す。すなわち、現実に労務に従事していなくても、労働力を使用者の自由な処分に委ね、使用者の指揮命令下にあって労働者が労務の提供を義務づけられた時間であれば、たとえこれが就業規則等で休憩時間とされているものであっても、なお労働時間に当たるというべきである。
したがって、本件仮眠時間が労働時間に当たるか否かを検討するには、これが使用者の指揮命令下にあって労働者が労務の提供を義務づけられた時間であるのかという観点から、労働からの解放がどの程度保障されているか、場所的時間的にどの程度解放されているかを実質的に判断しなくてはならない。
被告は地方郵便局との間の基本契約において、既定便、既定臨時便及び突発臨時便を運行して、郵便物を決められた日時に目的地まで運送すべき義務を負っているから、突然の荷量の増加などによって突発臨時便が出た場合には、午後1時から翌日午前5時までの本件仮眠時間であっても、これに対応して臨時便を運行することが基本契約上義務付けられたため、期間雇用労働者を24勤服務させ、本件仮眠時間中も外出や帰宅を原則として禁止し、かつ、仮眠室で仮眠しなければならないものと定められていたのである。
そうすると、被告が本件仮眠時間中に期間雇用労働者に臨時便の運行を指示した場合、これに応じるかどうかを同労働者の自由な意思に委ねていたとは考えられないので、本件仮眠時間中の運行指示も業務命令であり、原告らがこれを拒否することはできなかったのであり、原告らは、本件仮眠時間中も労働から完全に解放されていなかったといわなければならない。したがって、原告らは、本件仮眠時間中も使用者である被告の指揮命令下にあって労務の提供を義務づけられていたというべきである。
なお、仮眠時間が労働時間に該当する場合、どのように賃金を支払えば良いのかという問題もあります。仮眠時間が労働時間とされる場合、その時間が通常の労働は行わない訳ですから、通常の労働時間とは別の業務として別の金額を定めることは、最低賃金法に違反しない限り労使の自由とされます。
(労働時間チーム:日比彩恵子)