休憩時間の正しい解釈~手待ち時間・手空き時間

 中小企業では、職場と休憩場所とが一緒ということが多いと思いますが、特に接客を主に行う事業所の場合には、自分自身が休憩中であったとしても、他に人手がなければ来客への対応をしなければならないというのが現実ではないでしょうか。サービス業などではよく見られる光景ですが、これを労働基準法という視点で見てみることにしましょう。


 労働基準法第34条第1項では、「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」とあり、また労働基準法同第3項では、「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」との定めがあります。そもそも休憩時間とは、具体的にどのような時間をいうのでしょうか?


 例えば、コンビニの店員がお客さんが来るのをレジで待っている状態であるとか、トラックの運転手が荷物がトラックに運びこまれるのを待っている時間といったものをイメージしていただければ分かりやすいと思いますが、こうした時間は一見したところ、本来の作業には従事していません。休憩時間とよく似ていますが、このような時間は「手待ち時間」といわれます。使用者の命令があれば、いつでもその労働者は就労できる態勢で待機している時間であることから、行政解釈上、このような手待ち時間は労働時間として扱われます。(昭和33.10.11基収6286号)
 
 またこれとは別に「手空き時間」というものもありますが、前述の「手待ち時間」と違うのは、仕事からの開放度が高いという点にあり、それが労働時間とされるか否かは、ケースごとに判断が分かれるようです。その判断基準というのは、「その時間が仕事から完全に開放され、労働者が自由に利用できることを保障されているかどうか」にあります。(昭22.9.13発基17号)


 そこで会社としては、休憩時間と労働時間とをはっきり区別させ、次に短い単位でもよいので休憩時間をこまめに与えるといった対応が必要となるでしょう。法律では、短い単位であっても休憩時間は休憩時間となり、禁止をしているわけではないからです。もっとも法の趣旨から言えば、ある程度まとまった休憩時間を与えることが望ましいとされています。5分や10分といった休憩時間では、労働者は満足に頭や体を休めることもできない上、職場への不満も募るというのがその理由です。


 最近、サービス残業などに関してのニュースが新聞紙上を賑わすことが多くなっていますが、それに伴い、労働者の労働時間に対する意識は高まりを見せています。これまでは「当社の常識」として済まされていたことが、実は労働基準法違反だった、ということがあるかもしれません。労働者から指摘される前にいま一度、労働基準法の基本に基づき、自社の労働時間管理方法を点検されてはいかがでしょうか。
 



参考:
□昭和33年10月11日 基収6286号
 出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている以上いわゆる手待ち時間も労働時間である。
□昭和22年9月13日 発基17号
 休憩時間とは、単に作業に従事していない、いわゆる手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱われること。


(労働時間チーム)