退職届受理後の懲戒解雇の効力
近年、社員の一方的な退職届の提出に頭を抱える事業所が増えています。例えばある日突然、退職届提出と同時に「退職します!」と言ったきり出社しなくなったというケース。会社としては引継ぎについて等、頭の痛い問題です。この場合、退職届の提出がされているため自己都合退職としなければならないのでしょうか?それともこのような迷惑行為に対して、懲戒解雇として処分することができるのでしょうか?
この問題を考える際には従業員の提出した退職届の性質がまずは問題となります。これが合意退職の申し入れであるにせよ、一方的解約の申し入れであるにせよ、結論としては民法627条の規定に従い、退職届提出後14日が経過すれば退職の効力が生じるという解釈が通説となっています。裏を返せば今回の事例の場合、14日が経過するまでは在職中という扱いをすることが可能です。そのため、この間に懲戒解雇に該当する事由が判明した場合は、退職届提出後であっても相応の手続きを経て懲戒解雇とすることができます。
よく就業規則において、14日間無断欠勤する社員に対して懲戒解雇に処すると規定している会社がありますが、これは一般的には懲戒処分の種類、程度の妥当性を求める相当性の原則より訴訟レベルでは無効とされる可能性があります。法律上明文化されてはいませんが、人事院の指針(平成14年6月1日一部改正後)によると、「11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職または減給とする」という基準があり、これが一応の目安になるでしょう。
よって今回の件に関しては、14日間に他の懲戒解雇該当事由が判明したのであれば別ですが、14日の無断欠勤という迷惑行為のみをもって懲戒解雇とすることはできないと解釈するのが相当でしょう。
参照条文:
民法第627条第1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
(武内万由美)