パート・アルバイト労働者の所得と子育て支援

 8月12日、内閣府国民生活白書を公表しました。この白書の副題は「子育て世代の意識と生活」となっており、子育てについては日本全体の喫緊の課題となっていることが伺えます。そして、これには、現在の労働問題が深く関わっていることもわかります。

 

 白書の中では、「結婚・出生行動の変化」から「子育てにかかる費用と時間」まで様々な分析が行われており、まとめにおいては子育て世代に対する支援に必要な事項が3点掲げられています。今回は、この中でも1点目の「所得格差を固定化させないこと」に着目することにします。

 フリーターという言葉もすっかり定着し、現在ではパート・アルバイトを初めとした非正規従業員の活用方法についての意識が高まっています。確かにフルタイム労働者に比較し、労働調整的な意味合いを持つパート・アルバイト労働者は、企業にとって使い勝手の良い労働力であるのは間違いないでしょう。しかし一方で、国策レベルで国民の子育環境を考える場合には、この状況は非常に大きなマイナス要素を抱えているといわざるを得ません。つまり、これらのパート・アルバイト労働者については、年齢が上がっても所得の増加がさほど見られません。年功序列制度が崩れたと言われていても、ある程度年齢に応じて所得の増加が見られるフルタイム労働者とは格差が開いていくばかりです。したがってパート・アルバイト労働者については将来的な教育費の問題等が子育てに踏み切る阻害要因となっており、この状況は今後も深刻化することが確実な状況であるといえます。子育て支援という側面から判断しても、パート・アルバイト労働者をどのように扱うのかという政策レベルでの検討が強く求められています。

 

(宮武貴美)