出張中の労働時間の算定方法
使用者は、労働者の労働時間を適正に把握し、それを適切に管理する責務を有しています(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する指針」平成13年4月6日基発339号)が、出張中など、事業場外での業務に従事している場合には、その労働時間の管理は難しくなります。本日はこのように事業場外で業務を遂行する場合の労働時間管理についてお話したいと思います。
出張など、事業場外で業務を遂行した場合で、労働時間を算定し難しい際には、通常、労働基準法38条2に定める「みなし労働時間制」を適用することができます。みなし労働時間を適用した場合は、実際の労働時間に関わらず、下記のように労働時間をみなすという取り扱いを行います。
①所定労働時間労働したものとみなす。
②当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
③②の場合であって、労使協定が締結されているときには、その協定で定める時間を当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
こうしたみなし労働時間制が適用できるのは、「労働時間を算定することが困難な業務であること。事業場外で業務に従事する場合にあっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。」(昭和63年1月1日基発第1号)とされています。よって、例え出張中であっても、上司が同行していたり、いつでも連絡を取れる状態にあるなど、随時使用者の指示を受けながら労働しており、その労働時間の把握ができる場合は、実労働時間に基づいて労働時間を計算することになります。
一方、上記のみなし労働時間制②の「業務の遂行に通常必要とされる時間」とは、「通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間であること。」(昭和63年1月1日基発第1号)とされています。なお、労使協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には届け出の義務はありませんが、労使協定で定める時間が法定労働時間を超える場合には、所轄労働基準監督署長に届けが、そしてその法定労働時間を超える時間については、36協定の締結・届出および割増賃金の支払いが必要となります。
参考条文:労働基準法第38条の2 事業場外労働
1.労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
2.前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
3.使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
(労働時間チーム:日比彩恵子)