人事制度改革における評価制度充実の重要性と具体的施策
先日、財団法人社会経済生産性本部 社会労働部・雇用システム研究センターより「第9回 日本的人事制度の変容に関する調査結果概要」というレポートが発表になりました。この調査は全上場企業2,752社の人事労務担当者を対象に行われたもので、今回は254社の回答が集計されています。調査分野は、賃金・賞与制度の導入状況や採用の動向、キャリア開発支援、、評価制度柔軟な働き方への対応、そして福利厚生・退職金制度の導入状況と多岐に亘っていますが、今日はこの中でも非常に面白い切り口で分析がなされていた成果主義の成功要因分析について取り上げることとしましょう。
[成果主義導入企業は約9割 しかし適正な評価ができているのは半数が課題と認識]
評価・処遇制度の現状に関して、「業績ないし成績の評価結果により、賃金・賞与で相当の格差がついている」かどうかという設問については、「当てはまる」が37.0%、「どちらかというと当てはまる」が49.2%との回答がなされ、合算すると86.2%(219社)が、成果主義を導入しているという結果が出ています。
このうち、「現場の評価者の評価能力は、ほとんどバラツキはなく、ほぼ適正な評価ができている」かどうかという設問については、「当てはまらない」、「どちらかというと当てはまらない」をあわせると約半数(49.8%)に達しており、運用における人事評価制度の課題を感じている企業が多いことがデータとして現れています。ここまでは常識的に考えれば当然の結果であり、状況の確認といった域を出ていません。しかし、この調査が面白いのはここからです。
[成果主義成功の企業が採用している人事管理諸制度]
成果主義導入企業のうち、その運用が比較的うまく行っていると回答した43社を「成果主義Ⅰ」、課題が多いと感じている16社を「成果主義Ⅱ」として、人事管理諸制度の導入状況を比較しているのですが、その結果が以下のようになっています。
人事評価関連制度
□コンピテンシーの人事評価制度への導入 Ⅰ:44.2% Ⅱ:8.3%
□管理職に対する360度評価制度 Ⅰ:30.2% Ⅱ:0%
□苦情処理制度 Ⅰ:60.5% Ⅱ:25.0%
キャリア開発関連制度
□社内公募制 Ⅰ:60.5% Ⅱ:31.3%
□社内FA制 Ⅰ:16.3% Ⅱ:12.5%
□自己申告制度 Ⅰ 90.7% 50.0%
□キャリアカウンセリング Ⅰ:39.5% Ⅱ:12.5%
その他の制度
□従業員へのメンタルヘルス対応 Ⅰ:83.7% Ⅱ:37.5%
社内FA制こそ、それほど結果は変わらないものの、その他の諸制度については成果主義をうまく運用している「成果主義Ⅰ」の企業で、いずれも導入率が高くなっていることが分かります。具体的にどの施策が決め手になっているのかまでは読み取れませんし、また企業によってそのポイントは変わってくると思いますが、こうした人事管理諸制度の充実度合いが、成果主義人事制度の成否に大きな影響を与えていることは間違いなさそうです。私の私見としても、多面評価や評価結果のフィードバック、苦情処理などの仕組みは特に効果が大きいと考えていますので、こうした制度については是非導入を検討したいところです。
参考リンク
財団法人社会経済生産性本部「第9回 日本的人事制度の変容に関する調査結果概要」
http://www.jpc-sed.or.jp/contents/whatsnew-20060316-1.html
(大津章敬)
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