結論に導かせる工夫

 今回は、ある会社の管理職の方とお話した際にお聞きしたエピソードをご紹介します。



 先日、ある従業員がお客様において重大なミスを発生させました。そこで「今後の再発防止のために、クレーム報告書を提出するように」と指示をしました。


 私としては、ミスの再発防止が目的ですから、ミスが発生した原因とその事実、問題解決のために実施した対応、今後の再発防止策などを報告してもらいたいと思っていました。しかし、クレーム報告書に記載されていたのは「注意力が散漫でチェックが甘くなりミスが発生しました。申し訳ありません。今回のミスを反省し、今後同じようなことがないようにチェックを徹底します」という内容。ミスをして、お客様にご迷惑をお掛けした以上、しっかり反省してもらうことは確かに重要である。しかし、会社が求めているのは、今後、同様のミスを発生させないために、そのミスの原因をしっかり把握し、再発を防止する仕組みの改善である、この報告書ではまったく話にならない。どうしたものだろうか…。



 上司が部下に業務等について指示を出した際に上司の意図と違う、またはズレたことを行うケースは本当によく耳にします。上記の件については確かに部下の考え方にも問題があるかもしれません。しかし、部下の考え方に問題ありと理解していた場合には、事前に結論に導かせる工夫が必要が必要だったのではないでしょうか。


 上記の件でいえば「クレーム報告書を提出するように」と漠然と指示するのではなく、例えば
ミス発生の原因と環境
ミス発生時に実施した対応
今後、同様のミスを再発させないために求められる仕組みの改善
改善した仕組みを組織に定着させるための方策
といったように、考えて欲しいポイントをそれぞれ細分化して尋ね、求めるべき結論に誘導するような質問をすることが有効です。


 このように質問を相手のレベルや場面に合わせることを「チャンキング」、質問を細分化することを「チャンクダウン」、質問をより漠然として伝えることを「チャンクアップ」といいます。チャンクとは塊という意味であり、質問を塊に置き換えて質問を砕いたり、大きくしたりする質問の手法がチャンキングなのです。


 部下に質問を投げ掛けたときに返答が意図しないものだった場合には、ぜひ「チャンキング」を思い出して下さい。相手に対して何かを気付かせたい場合には「チャンクダウン」、相手に対して色々意見を引き出したい場合には「チャンクアップ」が有効です。みなさんは普段、部下に対していつも同じような質問ばかりしていませんか?質問をたった一つ変えるだけで、部下から思いもかけない返答が得られるかもしれません。


(志治英樹)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。