東京労働局の平成18年度における重点対策
先日、東京労働局より「平成18年度東京労働局行政運営方針の概要」という資料が発表されました。今日はこの資料から、今後の労働局の方向性を読み解いてみましょう。
まず、平成18年度の重点対策としては以下の6点が掲げられています。
高年齢者の雇用安定・労働環境の確保
高年齢者が安全に安心して働けるための対策として、65歳までの安定した雇用を確保するため、高年齢者雇用確保措置を講ずるよう指導・支援を行うとともに、高年齢者が安全に働けるような設備等に配慮がなされるよう労働災害防止等のための指導を行う。
若年者の適正な労働環境の確保
フリーター、ニート等を含めた若年者に対する働く意欲の喚起や就職支援等の雇用対策を推進するとともに、適正な労働環境確保のための支援・指導等を在学生を含む若年者、事業主等に対して行う。
労働時間管理の適正化などの一般労働条件の確保・改善対策の推進
賃金不払残業、不適正な裁量労働をはじめとする法定労働条件上の問題に関する未然の防止に向け、本社機能が集中していることも踏まえ、労働時間管理の適正化、基本的な労働条件の枠組みの確立・定着とその管理体制の整備などを図る。
アスベストによる健康障害防止、過重労働対策などの第10次東京労働局労働災害防止計画に基づく安全と健康確保対策の推進
総合的なアスベストによる健康障害防止対策を実施する。また、過重労働による健康障害を防止するため、時間外労働の削減、改正労働安全衛生法において設けられた医師による面接指導等の着実な実施を図るとともに、重篤な労働災害の絶滅や労働災害の減少を図るため、労働安全衛生マネジメントシステム、リスクアセスメントの周知、導入促進など第10次東京労働局労働災害防止計画(以下「10次坊」という。)に基づく安全と健康確保対策を推進する。
職業生活と家庭生活の両立支援
子育て世代の仕事と家庭の両立を支援するため、育児・介護休業法の周知徹底を図る。労働時間等設定改善指針の周知等を行い、子どもの養育に必要な時間が確保できるよう環境整備を図る。また、次世代法に基づき、できるだけ多くの一般事業主行動計画の策定・届出が行われるよう、18年度は特に300人以下の事業主に対し周知、啓発を行う。さらに、出産・育児により離職した女性がその多様なニーズに即して再就職・再就業することができるよう支援するマザーズハローワーク東京を新設するほか、地域における仕事と家庭の両立支援の推進に努める。
派遣労働者、パートタイム労働者等の雇用労働環境の整備
派遣事業の拡大、派遣労働者の増加に伴う関係法令の浸透が不十分な状況、違法派遣等の改善のため、適正な事業運営を確保するとともに関係労働者の労働条件・安全衛生の確保等を図ることとする。また、増加するパートタイム労働者の雇用管理の改善を促進するとともに、良好な求人確保を図る。さらに、有期契約労働者の労働条件の改善を推進する。
以上のような重点方針が掲げられていますが、その詳細を個別に見ていくと、以下のような点で実務への影響が大きいと予想されます。
労働条件の確保・改善等
労働時間管理に関する自己申告制度の不適切な運用等による賃金不払残業の問題が依然として認められることから、監督指導等を引き続き実施するとともに、労使の自主的な取組の一層の促進を図る。就業規則等の作成と適正な変更、雇い入れ時の労働条件通知書の交付による基本的な労働条件の枠組の確立と定着を図る。東京において導入事業場が増加している裁量労働制については、同制度の趣旨に適合した上で、導入・運用されるよう、周知、指導を行う。
高年齢者雇用対策の推進
平成18年度においては、改正高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置に関する事業主指導・援助の推進、高年齢者の再就職の援助・促進、年齢にかかわりなく働ける社会の実現と高年齢者の多様な就業・社会参加の促進等に取り組む。
障害者雇用対策の推進
企業の障害者雇用率は、未達成割合は依然として高く指導強化が重要となっている。そこで、平成18年度においては、改正障害者雇用促進法の円滑な施行、法定雇用率達成指導の徹底、障害者の雇用機会の拡大、雇用と福祉の連携による障害者自立支援に取り組む。
男女雇用機会均等確保対策の推進
職場において男女の均等取扱いが徹底されるよう行政指導を行うとともに妊娠・出産を理由とする解雇等均等取扱いに関する相談は、機会均等調停会議による調停や労働局長による援助により迅速な解決を図る。また、今通常国会に提出される予定の男女雇用機会均等法等の改正法案が成立した後は、改正法の周知徹底を図る。
こうした労働行政の動向も睨みながら、より良い人事労務管理の環境整備を行っていきたいものです。
参考リンク
東京労働局「平成18年度東京労働局行政運営方針の策定について」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2006/20060331-hoshin/20060331-hoshin.html
(大津章敬)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。