遅刻した者が残業した場合の割増賃金

 最近、遅刻の頻度が高い従業員がおります。何度注意をしても遅刻の回数は減らず、少しも改善される様子がありません。そのため、今後は遅刻をした時間分だけ残業をしてもらうことにしようと思っております。この場合、当社としては割増賃金を支払わなければならないのでしょうか?ちなみに当社の就業時間は、午前8時から午後17時まで(休憩1時間)です。


 遅刻の事実について、一向に改善の余地のない従業員に対して制裁を行いたいということのようです。結論から言うと、その方の1日の実労働時間がトータルして8時間(法定)労働時間を超えなければ、割増賃金の支払い義務はありません。


 今回の場合、遅刻をした時間(不就労時間)分について、そのまま終業時刻の繰り下げをしているだけということになり、結果として総実就労時間に変更はないことになります。よってこの時間帯に対しては、貴社の規定に「終業時間(午後17時)を超えた時間に対して割増賃金を支払う」等といった特別な規程がない限り、割増賃金を支払う必要はありません。


 なお、もし遅刻をした時間以上の残業を命ずるということになれば、割増賃金はもちろん36協定の提出等が必要となってくるため注意が必要です。とはいえこの場合、制裁としての残業を命ずることになり、もともとの時間外労働の必要性の趣旨に反することになります。この場合には法の範囲内の減給等、制裁の趣旨に基づく措置を講ずる必要性があるでしょう。


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